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【今週の「気になる本」】『わたしを連れて逃げて、お願い。』

2016年09月17日 公開
2016年09月18日 更新

松田洋子著/エンターブレイン

悲劇なのに、どこか笑える迷走ロードムービー

今回ご紹介する1冊は、『わたしを連れて逃げて、お願い』。主人公は、過干渉で厳格な祖父母に育てられている、福田日芽(ひめ)。家と学校の往復を強いられる生活に嫌気がさし、常に「いつか王子様が迎えに来て、今の自分を救ってくれる」と信じている女子大生だ。そんな単調な日々を送っていたある日、日芽は顔だけが取り柄の役者志望の青年・加藤央治(おうじ)と出合い、央治の所属している劇団「モリオ修道院」に入れ込んでいく。しかし、生きがいを見つけた矢先、央治は強盗殺人事件に巻き込まれ、容疑者として指名手配されることに。そこで日芽は、央治とともに逃亡の旅にでるのだが……。

悲劇的な状況なのにどこか間が抜けていて、笑ってしまう場面が多いところがこの作品の魅力の一つ。たとえば、逃亡資金を稼ぐために、日芽が生まれて初めて働く辛さを痛感する場面などは、あまりにも日常的で逃亡犯であることを忘れてしまった。もがけばもがくほど状況を悪化させるのに頑張ってしまう、不器用な生き方しかできない2人に共感できる方々も多いのではないだろうか。

 

執筆 S/N (コミック担当)

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価格(税込):780円

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