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真面目だけれど不器用。「商売繁盛」はまだまだ遠い(ブルガリア)

2016年10月05日 公開
2021年08月23日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(14)石澤義裕(デザイナー)

頑張っているけど「何かが抜けている」サービスの数々


村の中を闊歩するヤギたち。

首都ソフィアの繁華街。
調理場が目抜き通りに面した中華レストランに、心を忘れた仕事ぶりがありました。

フライパン片手に猛火に立ち向かう、シェフのパフォーマンス。食欲がそそられますが、顔に愛想がなく真剣味もありません。

焼きそばをふたつ頼んだら、ひとつはソースがひと振りだけ。別皿には3回も振りかける謎の不均等さ。
ソースの多いほうは塩辛くて食べられないという、想像どおりの結果に驚かされます。

鍋振りに命をかけて、味付けは二の次。
シェフが奮闘するほど、客足が遠のくことでしょう。

山の麓の魚料理レストランは、風流に走り過ぎました。注文を受けてから、スタッフが庭先の池で釣りを始めるのです。

普通に釣り竿を垂れるのだから、いつ食べられるのかわからないというワクワク感が前菜というわけです。

ただ、空腹をあおるという味付けは客次第かもしれません。

クレームが入ったのでしょう。一度、竿を投げ出して、網ですくっていましたから。

 

愛されるサービスが招いた悲劇?

とかくアイデア勝負に出たがるブルガリア人のようですが、多くの人は実直に働いています。元社会主義国とは思えない、おもてなしのサービスを身につけています。

温水プールがあるため、よく肥えたおばあさんが水着姿でうろうろ歩いている暑苦しい村でのこと。

普通の一軒家を改築した宿に、チェックイン。
オーナーの女性は、40代半ばの美人。

非常に気さくな人で、妻同伴でなかったら恋の花でも咲かせたい女性です。
安宿にもかかわらず、分不相応な丁寧な接客を受けます。

それなのに、悲しい事件が勃発。

部屋のソファに寝転び、たったの10分。

痒いのです。

やたらと痒いのです。

腕を見ると、びっしりと赤い斑点。

ダニです。

彼女に嫌われたくないので、「ダニがいます」とは言えませんでした。

翌朝、事情を告げずにチェックアウト。次の宿泊客がダニに刺されて怒るのではないかと、拙者の小さな胸が張り裂けそうです。

愛されるサービスが招いた悲劇。

ブルガリア人は真面目に働きますが、商売繁盛は遠そうです。


夕涼みする女性たち。

著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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