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「氷の国」だけに情熱が足りない!?(アイスランド)

2016年11月03日 公開
2021年08月23日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(15)石澤義裕(デザイナー)

「名物」がどこにも見当たらない?

例えば、EUへの加盟を取り下げるほどにこだわった漁業。

名物の手長海老。
喉から箸が出るほど食べたいのに、どこで売っているのか、さっぱりわかりません。

方々を探しまわってやっと見つけたのは、スーパーマーケットの冷凍庫。
活き造りを食べたいとは言いませんが、マンモスかと思うほどに化石化した冷凍ものだけ。
名物にして、この扱いなのです。

海草のダルス。
最近スーパーフードとして注目を浴びているダルスですら、とうとうご本尊を拝むことすらできませんでした。

どこの国でも特産品というものは、目に余るほど陳列してナンボだというのに。

そして鯨。
これは我が家の懐事情が許してくれないのですが、それでも3泊4日もフェリーに揺られて流れ着いたのですから、よく来なさったねと長旅をねぎらって、一口サイズのサイコロ鯨ステーキとか、貧乏な旅人にも一片の幸せを味わわせてほしい。

そんな心遣いは一切ない。

債務不履行したとはいえ、金融立国。お父さんお母さんがふたりで切り盛りしているような、愛に満ちた来々軒的食堂はないのです。


野菜ラーメンの824円が、最安値の軽食です。普通のラーメンは1,340円。

 

「アイスランド人」は一体どこに?

鯨のような稀少品なら、縁がないと諦めます。
でも人口の4倍近くいる羊ですら、清水の舞台から転げ落ちる値段です。

幸い、ドイツ人の旅行者が食いきれなかったからと、生のラム肉を1.2kgも恵んでくれました。
炭火でじっくりと焼いたところ、妙に塩辛い。
どうして羊がこんなに塩辛いのか、地元民の言い分を聞きたいものだと思ったところで気づきました。

よく考えたらアイスランド人とのふれあいが、ぜんぜんありません。

出会う人は、観光客か出稼ぎに来た外国人。
2週間もドライブして、生粋のアイスランド人とおしゃべりしたのは、最後の夜、宿のオーナー夫妻だけ。

その夫妻も、翌朝早くに仕事に出かけて留守。
誰にも見送られることなく、ひっそりと宿をチェックアウトする放置プレイなのです。

思い返せば、露天風呂には誰もいませんでした。
入浴料は、祖末な缶にお金を入れるだけ。

地熱を利用した温室栽培の野菜は、無人販売。

シーズンオフになったからか、スタッフのいないキャンプ場も多く、宿泊料金すら払えなかったこともあります。

売掛金の回収ができないほど、「ふれあい」の足りないIT系金融国家なのです。


露天風呂。入浴料は、入口の箱へ。

著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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