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ビジネスの面白さは、「芸術」と「科学」のバランスにある

2016年12月15日 公開

寺尾 玄(バルミューダ社長)

【連載】急成長の家電ベンチャー・バルミューダの「ギャップを作る発想法」 第3回

 扇風機の『GreenFan』やトースターの『BALMUDA The Toaster』など、斬新な家電を生み出しているベンチャー企業・バルミューダ。しかし、優れた製品を生み出すだけでは、企業としての成長はおぼつかない。クリエイティブと「お金」を両立させることが重要だ。しかし、これは多くの経営者が頭を悩ませる問題でもある。今回は、創業社長・寺尾玄氏の、「お金」についてのユニークな考え方をうかがった。

 

バルミューダが上場を目指す真の理由

 私がバルミューダを創業したのは2003年のことでした。現在、創業から15年になる2018年に上場をするべく、準備を進めているところです。

 一般的に上場の目的は、永続する企業を作るためだとか、資金調達を行なうためだとか言われていますが、私にとってはそのどちらでもなく、「管理体制を整える」ということが目的です。

 当社が家電事業に進出して最初に開発したのは、2010年に発売した『GreenFan』でした。当時の当社はまさに倒産の危機にありましたが、『GreenFan』の大ヒットによって危機から救われただけでなく、会社が一気に大きくなりました。

 その後、空気清浄機や加湿器なども発売したものの、2015年にトースターの『BALMUDA The Toaster』を発売して大ヒットするまでの数年間は「踊り場に来ているな」と感じていて、「これから先に進むには、上場審査をクリアするレベルにまで、社内の管理体制を整備しなくてはならない」と思ったのが、上場を考えるようになった一番の理由です。

 管理体制というのは、ひと言で言うと、利益へのこだわりです。

 私自身はクリエイティブにしか関心がなくて、何を生み出し、社会にどういう影響を与えるかについては強い興味がありますが、それ以外のことについては二の次、三の次にしていました。こういう人間がトップを務めていて、「最高のモノを作ろうぜ!」とだけ考えていたら、どうしたって利益はあと回しになってしまいます。2~3年前までは、「今月で資金がショートしますよ!」と毎月のように言われていました。

 資金がショートすると言われて、その金額が数百万円くらいなら借りてくることもできるかもしれませんが、会社の規模が急に大きくなったこともあり、億単位で足りないと言われるのです。これは簡単には対応できません。

 私はこのドキドキをそれなりに楽しんでいて、「なんとかしなくては」と真剣になっていろいろなところを回ったり、支払いの算段をつけるためにいろいろなことを考えたりして乗りきってきましたが、毎月キツかったというのも事実です。

 当時は管理体制が整っていなかったので、こうした問題が起きるのは当然でした。クリエイティブと利益の管理とのバランスが崩れていたのです。

 バルミューダという会社は何をやりたいのか。それは、「お客様を大喜びさせたい」ということです。このままでは、お客様を大喜びさせ続けることができない。その反省から、利益をしっかり管理して、会社の中に資金を貯め、最高の製品を作り続けていく体制を作ろうとしているところです。

 

「芸術」と「科学」が会社経営の両輪

 では、利益の管理が会社にとって一番重要なのかといえば、そうではありません。お金自体は無力なものだと私は考えています。

 確かに、お金はビジネスが成功しているかどうかを測るために使われます。売上げや利益の金額が大きければ大きいほど、そのビジネスは成功していると見なされる。

 しかし、お金は、お金のままではなんの利益も生み出しません。お金を増やすことができるのは、芸術的な活動だけなのです。

 ここで芸術的というのは、数値では表わせないもののことです。私は、世の中には数値で表わせる「科学的なもの」と、表わせない「芸術的なもの」とがあると捉えています。お金は「科学的なもの」ということになります。

 お客様がモノを買うときに何を根拠に判断しているのかといえば、最後の決め手は感覚、つまり芸術的なものです。

 たとえば、クルマを買うときに、白いクルマを選ぶか黒いクルマを選ぶかは、お客様1人ひとりの好みの問題です。昼食を牛丼にするか豚丼にするかというのも好みの問題。同じような価格、同じようなスペックの商品を前にしたとき、最後にものを言うのは好み、つまり芸術的なものなのです。

 すべてのモノが最終的にお客様の感覚によって選ばれる以上、すべてのビジネスについて、「お金を生み出すのは芸術的な活動である」と言えることになります。

 モノ作りにおいても、価格は重要な要素の1つではありますが、価格だけを重視していてはお客様に選んでいただけないし、利益を生み出すこともできません。お金という科学的なものと、お客様の感覚という芸術的なものの両方のバランスがうまく取れてこそ、お客様に支持されて、競争に勝てる、というのが私の考えです。

 結局、科学的な活動と芸術的な活動の両方が混じりあっているのがビジネスですから、そのバランスをいかに取っていくかというところにビジネスの難しさがあり、面白さがあるのではないでしょうか。

 当社の場合、創業以来、芸術的な活動には自信がありました。一方、利益を管理するという科学的な活動が弱かったのも事実。ですから、そこをなんとかして強くしていきたいということで、上場の準備を進めているわけです。

 もちろん、管理体制を強化するためには、上場以外にもいくつかの方法が考えられます。その中で、当社に必要な管理体制の強化を素早く確実に実現するには、上場審査というツールを使うのが手っ取り早いと考えました。

 上場の準備は大変ですが、管理体制の構築をしっかりやっている会社とやっていない会社では、内部の構造がまるで違います。私は本来、こうしたことにあまり関心のない人間でしたが、やる以上は絵に描いた餅に終わらせず、絶対に効果が出るようにしたいと思っています。

 現在、会社の中身は相当に良くなり、以前に比べてはるかに利益体質に変わってきました。利益を毎月しっかりと上げて、内部留保を大きくしていけば、これまで以上に良いモノが作れるのではないかと期待しているところです。

 

利益へのプレッシャーとクリエイティブは両立する >

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著者紹介

寺尾 玄(てらお・げん)

バルミューダ〔株〕代表取締役社長

1973年、千葉県生まれ。91年、高校を中退し、地中海放浪の旅に出る。92年、帰国して音楽活動を開始。2003年、〔有〕バルミューダデザイン(現バルミューダ〔株〕)を創業。10年、『GreenFan』を発売。15年、『BALMUDA The Toaster』を発売。

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