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紙に書くからこそ、情報が即座に引き出せる



2017年01月19日 公開

松井忠三(良品計画前会長)

働き過ぎで気づかされた体調管理の重要性

使用開始まもない1990年代のノートには、天気の記録や名言のメモなどの習慣は見られない。

「その時点ではまだ課長でしたから、経営者の名言を意識する必要などありませんでした。部署も人事部だったので、株価や天気もさほど重要事項ではない。当時の私にとっては、この手帳は単なるスケジュール帳だったのかもしれません。読み返してみると、25年間でずいぶん、使い方が変化したことに気づかされます」

もう一つ、大きく変わったのは、健康に関する記入事項が増えたことだ。

「飲んだ薬のチェック、体重や血圧、風邪等の異変、健康診断のデータなどを書いています。丸囲みの『飲』という字は、お酒を飲んだ日です。アルコールの摂取日が週5日を超えないように調整しています」

健康管理を意識するようになったのは、社長になったころから。就任した2001年当時、良品計画は深刻な業績悪化に苦しんでいた。その苦境を乗り越えるべく、就任直後から実に6カ月間、休みなしで働いた。

「翌年一月、決算発表の直前に強いめまいに襲われました。幸い、発表後に受けた検査では異常なしという結果でしたが、以降、身体の症状には気をつけるようになりました。
異変の原因は過労とストレスでした。しかも、過労にもかかわらず、眠れない日もありました。そこで、この頃から毎日、睡眠時間を記入するようになりました。すると、不眠が2日続いても、3日目には必ず眠れている、といったリズムがつかめたのです。同じように、体調の細かな変化を記し、それを前年と見比べると、『秋口に不調が出やすい』といった傾向が見えてきました。そのおかげで、適度な運動と早めの就寝、魚・野菜中心の食事など、適切な対策がとれるようになりました。これは、継続的に記録することで得られた気づきです」

 

紙のほうがデジタルより保存性が高い!?

この経験を境に、手帳は公私ともに「情報の一元管理ツール」へと変わっていった。

「経営にせよ健康状態にせよ、現状を的確に把握し、リスクがあればすぐ対処しなくてはなりません。それには、ひとつのツールですぐ情報確認できる状態が望ましい。ならば、手帳にあらゆる情報を書き込めばいい、と考えました。今は何を考えるにも、まずこの手帳を開きます。去年と今年の二冊をパラパラとめくれば、どんな件についても、おおよその状況がつかめます」

小ぶりな手帳の紙面には、細かな字でぎっしりと情報が詰め込まれている。

「ですから、『楽に書ける筆記具』を使うことも大事。2Bの芯のシャープペンシルなら細かく書けて、かつ明瞭に読めるので便利です。いったん書いたことの変更もよく起こるので、細かい部分を消せる消しゴムも必需品。これには以前、無印良品で売っていた、ノック式で繰り出す方式のものを愛用しています。残念ながら数年前に廃版になってしまったのですが、残りを全品買い上げたので、一生分のストックがあります(笑)」

各案件の詳細部分はパソコンに入れるが、メインの情報は手帳で管理する。紙に手書きする方法がやはりベストだ、と語る。

「一覧性の高さはもちろん、保存性に関しても紙の方が上だと思います。デジタル情報は劣化しない、と言われますが、ワープロ時代にフロッピーディスクに保存した文書を今読むことなど不可能でしょう。昔の携帯電話で撮った写真も、もう見るのをあきらめてしまっている人が多いのでは。でも、紙に書いておけばこのとおり、25年前のことも変わらず読めます。古い情報を探すときも、さほど不便は感じません。記憶を頼りに数冊パラパラと見ればすぐ目当ての箇所が見つかります。
そして何より、どこにでも持ち歩けて、即座に使えるのが紙のメリットでしょうね。現在の仕事は出張が多いのですが、列車や飛行機の待ち時間にもしょっちゅう開いています。思い立ったらすぐに取り出せて、読めて、書き込める。この手軽さも、アナログならではの強みです」

 

松井忠三氏の手帳の使い方



週間スケジュール欄にはスケジュールの他、天気、睡眠時間、お酒を飲んだ日の記録、ウォーキングの記録など。手帳でありながら、ライフログとしての役割も果たす。


巻末にあるフリースペースには、名言をメモしている。新聞や雑誌などで見つけた名言・格言をメモ。自分で思いついた良い言葉もメモしておく。本や雑誌で見つけた言葉だけでなく、自分で思いついた良い言葉もメモ。経営の指標になっている。

 

《『THE21』2017年1月号より》



著者紹介

松井忠三(まつい ただみつ)

良品計画前会長、松井オフィス代表取締役社長

1949年静岡県生まれ。’73年東京教育大学(現・筑波大学)体育学部卒業後、西友ストアー(現・西友)に入社。’92年に良品計画へ異動。総務人事部長、無印良品事業部長を経て、初の減益を出した直後の2001年に社長に就任。組織風土改革によりわずか2年でV字回復を成し遂げ、’07年には過去最高売上高(当時)を達成した。’08年会長就任後も、組織の「仕組みづくり」に継続して取り組む。’15年5月に退任し名誉顧問に。著書に『覚悟さえ決めれば、たいていのことはできる』(サンマーク出版)、『無印良品の、人の育て方』(KADOKAWA)などがある。

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