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星野リゾートの現場力(6)リゾナーレ小浜島の「ティンガーラハンモック」

2017年01月20日 公開
2023年05月16日 更新

星野佳路(星野リゾート代表)

施設管理の仕事に「楽しみ」を見出せた理由

日本を代表するリゾート運営会社・星野リゾートでは、「遊び」や「楽しみ」の中に仕事のヒントを見つけたり、逆に仕事をきっかけとした趣味を楽しんだりしている社員が多いという。本連載では、そのような「遊びと仕事」の融合の事例を、代表の星野佳路氏のコメントとともに紹介。第6回は、「星野リゾート リゾナーレ小浜島」から、物作りを楽しむ裏方スタッフの活躍をリポート。《取材・構成=前田はるみ》

 

南国リゾートならではの感動アクティビティ

珊瑚の海に囲まれたリゾートホテル「星野リゾート リゾナーレ小浜島」(沖縄県)にこの夏、全長百メートルの巨大ハンモック「ティンガーラ(天の川)ハンモック」が登場した。離島ならではの暗闇のなかでハンモックに寝ころび、天然プラネタリウムを楽しむというものだ。

同施設には、南国リゾートを満喫できる仕掛けが他にもたくさんある。ガジュマルの木陰で読書とドリンクが楽しめる「島Books&cafe」や、白い砂浜を高さ六メートルの貝殻と珊瑚のクリスマスツリーとランタンで飾る「珊瑚の島のホワイトクリスマス」など、どれも小浜島でしか体験できないアクティビティである。

これらの仕掛け作りを担当するのが、施設管理マネジャーとして働く富永五男氏だ。普段は施設管理や修繕、改善が主な仕事だが、その地域や施設ならではの魅力作りについて話し合う部署横断の会議にも参加し、物づくりの面から貢献している。

最初に作った「島ブックス&カフェ」は、「自然のなかに本棚があると素敵だね」というスタッフの意見がきっかけだったという。雨や湿気から本を守るため、本棚内に除湿機を設置して「濡れない本棚」を実現した。また、昨年初めて設置したハンモックは全長50mだったが、ゲストから好評だったため、今年は規模を倍にして展開している。「スタッフから出た意見やアイデアに対して、『できない』と言わないことをモットーにしています。ゲストが喜ぶ顔を想像しながら具現化していくことが楽しい」と話す。

 

 

「施設管理」の枠を超え仕事の楽しさを発見

鹿児島出身の富永氏は自然に囲まれて育ち、兄弟と一緒にツリーハウスを作って遊ぶような子供だった。物作りが好きで、普段目にするものも「どうすれば自分で作れるか」を想像しながらアイデアや知識を蓄積しているという。

「子供の頃の体験や物づくりへの興味、施設管理の経験を総動員して、ゲストに楽しんでもらえる施設づくりに貢献できる今の仕事にやりがいを感じています」

今でこそ仕事を楽しんでいる富永氏だが、「以前は言われたとおり修繕の仕事だけをしていましたし、それが普通だと思っていた」と話す。転機は2011年、富永氏が働いていたホテルの運営母体が星野リゾートに変わったことで訪れた。スタッフ全員が施設の魅力づくりに参加できる環境に変わり、自分の得意や好きなことを仕事に生かす道を見つけたのである。

富永氏は現在、冬に予定しているクリスマス企画をさらに進化させようと考えている。「じつは今度は、珊瑚でお城をつくろうと思っているんです」。従来の施設管理の仕事の枠にとらわれず、新たな仕事の楽しさを生み出していく富永氏の挑戦はまだまだ続きそうだ。

 

 

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著者紹介

星野佳路(ほしの・よしはる)

星野リゾート代表

1960年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。日本航空開発(現・JALホテルズ)に入社。シカゴにて2年間、新ホテルの開発業務に携わる。89年に帰国後、家業である㈱星野温泉に副社長として入社するも、6カ月で退職。シティバンクに転職し、リゾート企業の債権回収業務に携わったのち、91年、ふたたび㈱星野温泉(現・星野リゾート)へ入社、代表取締役社長に就任。

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