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「精神論」は通用しない!中国人は「仕組み」で動く

2017年08月23日 公開
2023年03月23日 更新

<連載>中国人エリートの「グレーゾーン」での戦い方第6回:江口征男(GML上海/Y&E総経理)

日本人がやりがちな「大きなお世話」

中国でビジネスに携わる日本人がよく犯す失敗が「中国人に正しい考え方を教えてあげよう」という余計なお世話です。

そういう日本人の多くは、よかれと思ってやっていると思うのですが、「人の考え方を変える」という精神論はグローバルビジネスではなかなか通用しません。精神論というキレイで高尚な方法ではなく、インセンティブ(損得)で人の行動を変える……という泥臭い方法に考え方をシフトするべきなのです。

多くの人が(自分たちの損得を考えると)自然とこちらの考える通りの行動を行うような仕組み。個別に言って聞かせて考え方を改めさせる……という非効率なやり方ではなく、全体の7~8割に効くルールを設定するほうがうまくいくのです。

 

不正を激減させた習近平のキャンペーン

一昔前は、中国では不正行為が当たり前でした。役人が自分の地位や権限を利用して不正に稼ぐことや、企業の調達担当者が取引先からキックバックをもらうことは、商売の潤滑油であり必要悪だと考えるほうが普通でした。

この状況で「不正は悪いこと」「コンプライアンスを守るのが当たり前」と精神論を何回唱えても不正は減りませんでしたが、習近平が腐敗撲滅キャンペーンでハエだけでなく虎も叩いて「不正を行うと大変なことになるよ」という強烈なメッセージを送ると、自然と不正をしなくなるようになるのです(それでもゼロにはなりません・笑)。

大変なことになるリスクを覚悟して不正をやるよりも、真面目にコツコツ頑張ったほうが得だと思わせることで、個人個人が自分の判断で、こちらの思う通りの行動を自然に取るように仕向けることが重要なのです。

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日本と中国では「公平感」の捉え方が違う >

著者紹介

江口征男(えぐち・まさお)

GML上海総経理

Tuck (Dartmouth) MBA。横浜国立大学大学院工学研究科修了。外資系経営コンサルティング会社、子供服アパレル会社を経て2007年より中国上海移住。現在上海にて経営コンサルティング会社2社(GML上海、Y&E)を経営。著書に『中国13億人を相手に商売する方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。中国ビジネスに関する講演、執筆多数。

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