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30分に1度、20メートル歩くだけでオフィス疲れは軽減できる!

2017年11月09日 公開
2023年03月23日 更新

梶本修身(東京疲労・睡眠クリニック院長)

<身体の部位別疲れの原因とその対策>

……その原因は「眼・肩・首」にあり!
頭がだるい、重い、痛いといった症状には、さまざまな原因がある。たとえば片頭痛には遺伝子が深く関わっているらしいことも最近の研究で明らかになってきているが、最も一般的な頭痛の原因は、眼の疲れや肩・首の凝りから来ているもの。「眼」と「肩凝り」の項目を参照し、改善を心がけてほしい。また、寝る前、暗い部屋でスマホの強い光を見る習慣などはご法度。睡眠の質を下げることは頭痛を引き起こすので注意が必要だ。

肩凝り……マッサージもいいが、もっと大事なこととは?
肩凝りに限らず、腰痛や足の疲れなど「マッサージで癒してもらいたい症状」は、自律神経の機能低下により血液・リンパ液・関節液の流れが悪くなることによって起こる。マッサージを受ければ、外からの刺激で促される血流増加や、リラックス効果がもたらす副交感神経の活性化によって一時的な回復が得られるが、循環の悪さという根本的な原因は取り除けない。自分で身体を動かして、循環を良くする工夫が必要。両手が心臓より高い位置にくるように「バンザイ」をして、手を握る・開くという動作を繰り返すと、滞りがちな静脈血が心臓に戻りやすい。肩凝りの軽減のほか、指先の冷えにも効く。

腰痛……30分に1度の「トイレ休憩」はマスト!
デスクワーカーにはおなじみの症状、腰痛。直接の原因は、同じ姿勢を長時間続けることだが、これがさらに深刻な症状を引き起こす恐れがある。股関節や膝など、直角に曲がる部位では血流が滞りやすく、4時間座り続けると腎臓の血流が10%も低下するのだ。1日7時間机に向かう人は3時間未満の人に比べて死亡率が約2倍、というショッキングなデータも。予防策は当然、「姿勢を変える」こと。30分に1度は立ってトイレ休憩を。また、「貧乏ゆすり」も血流を大幅に改善させる。マナーとしては難ありだが、予防策として大いに活用したいところだ。

……なるべく「人として自然な状態」に戻そう
眼精疲労は、自律神経の本来の機能に逆らうことで発症する。元来、哺乳類の眼は活動時=交感神経優位時には「遠く」を、リラックス時=副交感神経優位時には「近く」を見る仕様になっている。野生動物は狩りをするにも捕食を逃れるにも、広い視野で遠くまで見なくてはならない。逆に、子供が母と接するような安らかな場面では、眼は近くを見ている。つまり、パソコン作業等のデスクワークは「交感神経優位時に近くを見る」ねじれ状態。交感神経優位にもかかわらず眼には副交感神経刺激を与える必要があり、その矛盾で自律神経機能不全に陥りやすい。結果、集中力の低下や頭痛を伴う眼精疲労へ発展する。休憩時間に窓から遠くを見るなどしてバランスを取ろう。

脚の疲れ……歩いたほうがむしろ疲れが取れる!?
脚の疲れも、肩凝り・腰痛と同じく血流とリンパ流が原因。座り仕事で血流とリンパ流が悪くなると、なんとか流れを回復させようと、ますます自律神経が稼働する。こうなると、疲労が疲労を呼ぶ負の連鎖に。それを防ぐには、「歩く」=脚を動かすことで自律神経の仕事を減らすのが一番。足の筋肉が伸縮すると、「ミルキングアクション」という、牛の乳しぼりのような動きが起こり、下方に沈滞した静脈血が心臓に戻りやすくなる。冷えやむくみの解消、老廃物の排出効果も。コツは、短く頻繁に行なうこと。30分に一度、席を立ち、20m歩くだけでも効果あり。

 

《『THE21』2017年12月号より》

――続きは『THE21』2017年12月号をぜひご覧ください!

著者紹介

梶本修身(かじもと・おさみ)

医学博士 /東京疲労・睡眠クリニック院長

1962年生まれ。大阪大学大学院医学研究科修了。東京疲労・睡眠クリニック院長、大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授。2003年より産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者を務める。ニンテンドーDS『アタマスキャン』のプログラムに携わる。近著『なぜあなたの疲れはとれないのか?』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。

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