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アルツ磐梯/猫魔スキー場の「パーク」

2017年12月01日 公開
2023年07月12日 更新

<連載>続・星野リゾートの現場力(4)

 

スノーボードが好きだから、「自分でパークを作りたい」

山田さんがスノーボードと出会ったのは、20歳のとき。子供の頃からスキーに親しみ、競技スキーではかなりの腕前だった。「スノボが面白いよ」と聞いて挑戦してみたが、スキーのようにうまく滑れない。悔しかった。「スキー場で働けば思う存分練習できて、もっとうまく滑れるようになるかもしれない」。そんな思いから、地元にあるアルツ磐梯で働き始めたのだ。スピードを競う競技スキーとは違い、ジャンプや回転などの技を魅せるスノーボードの面白さにたちまち虜になった。

初めからパーク造成を仕事にしていたわけではなかった。プロのスノーボーダーを目指し、仕事の合間をぬって練習に没頭した。そんなとき、ある考えが頭をよぎった。

「自分でパークを作れるようになれば、もっとうまく滑れるようになるんじゃないか」

上達したい一心でパークのアイテムを作り始めたのだ。そのうち、利用者から「楽しかった」と声をかけられるようになった。プロになる夢はなかなか叶わなかったが、「お客さまにもっと楽しいんでもらいたい」とパーク造成に夢中になっていった。

転機は2003年に訪れた。スキー場の運営が星野リゾートに移ったのだ。星野リゾートでは、現場スタッフが自分たちで自由に考え、サービスを作り上げていくことが奨励されている。パーク造成においても、これまではある程度決められた形に造成していたが、「こんなアイテムがあったら面白そうだ」「お客さまにこんな風に楽しんでほしい」と自分たちでみずから考えてパーク造成に取り組むようになった。

 

ベテランスタッフが目論む「次なる挑戦」

今でも滑るほうは趣味で楽しんでいる。アルツ磐梯には、全長1,800mのコースに、地形を生かしながらジャンプ台やアイテムが散りばめられたパークがある。「アイテムとアイテムの間隔による飛びやすさだけでなく、『この地形はこういう風に遊ぶと楽しそうだな』ということは、実際に滑ってみないとわからない」(山田さん)ため、自分たちで作ったパークは必ず試しに滑ってみるようにしている。

山田さんのパーク造成の技術は業界でも一目置かれていて、他のスキー場からもイベントのためのコース造成を依頼される機会も増えている。「自分が認められたみたいでうれしいですね」と山田さんは話す。

次に向けて考えていることもある。最近増えている海外からの利用者へのサービスだ。「海外の方にも楽しんでもらえるパークとはどのようなものか、皆でアイデアを出しているところです」と山田さん。最新技術の習得や顧客に喜ばれるパーク造成に貪欲に取り組むベテランスタッフの挑戦はこれからも続く。

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