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【世代分析】40代が「くすぶり感」を抱える理由

2018年01月22日 公開
2023年03月23日 更新

豊田義博(リクルートワークス研究所主幹研究員)

上の世代に引きずられず、「自分なりの幸せ」を見つけよう

「今の40代」とはどのような世代なのだろうか? よく言われるのは、「氷河期世代」や「貧乏くじ世代」などの不遇な世代ということだ。しかし実は、40台の中でも前半と後半ではだいぶ違う世代になるという。キャリア研究の第一人者である豊田義博氏に分析していただいた。《取材・構成=前田はるみ》

今の40代は「一番損した世代」!?

今の40代は、1968年から77年生まれの人たちです。この世代は、68年から70年生まれの最後のバブル世代と、バブル経済の恩恵にあずからなかった団塊ジュニアが混在した世代と言えます。

ターニングポイントは、1991年です。それまでの日本の経済成長の勢いがパタリと止まったのが、その年でした。リクルートが毎年発表している大卒の求人倍率調査でもそれは明らかで、求人倍率は91年が最も高く、その後、急降下しています。就職がどんどん厳しくなっていく転換期に、40代の人たちは社会人デビューしていったのです。

とくに、70年代初頭に生まれた人たちは、大学時代の先輩がいい会社に就職していくのを目の当たりにしながら、自分たちの番になると環境が激変して、就職の機会が激減している。そんな落差をリアルに体験し、極端な言い方をすれば「一番損している感覚」が強い世代かもしれません。

 

「会社には頼れない」スペシャリスト志向が登場

仕事に対する意識も、40代はその上の世代とは異なります。

今の50代が社会に出た頃は、日本経済の成長とともに会社も成長していった時代でした。年功序列の会社組織の中で、人々は「いつかは役員になれるかも」と期待を抱きながら猛烈に働きました。自分の意に添わぬ配属や異動にあっても、会社に属していれば将来は安泰と考え、ゼネラリストとして働いたのが50代の特徴です。

それに対して、40代が社会に出た1990年代は、山一證券や北海道拓殖銀行の破たんに代表されるように、企業の倒産やリストラに揺れた時代でした。今の40代の人たちは、多感な二十代の頃にそれらを目撃し、「会社に頼ってはいられない」と危機感を覚えた最初の世代です。また、上の世代のように、皆が部長・課長になれる時代も終わりました。自分で専門性やスキルを身につけて、スペシャリストとして社内で生き残るか、あるいは転職してキャリアアップを目指そうという意識が強まりました。実際、転職はそれ以前の世代と比べて確実に増えています。

また、外資系企業が国内での存在感を強め、新卒採用や中途採用を増やしていったのもこの時期です。90年代は、外資系企業への就職が一つのステータスとなった時代でもありました。

「キャリアアップ」や「勝ち組・負け組」という言葉が生まれたことからもわかるように、「キャリアアップして年収を上げたい」、「同期よりも早く昇進したい」など、上昇志向や他者比較傾向が強いのもこの世代の特徴です。

一方、その下の世代である30代前半以降になると、「アップ」という感覚から、「自分らしさ」へと基軸が移っていきます。自己実現や社会貢献への欲求が強く、仕事以外にも自分の時間を大切にして、生活全般を充実させたいと思っています。

こうして見ると、今の40代は、会社に自分の将来をすべて委ねた50代のバブルを経験した世代と、仕事以外にもいろいろなことにも価値を置く若者世代に挟まれた世代だと言えます。

 

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著者紹介

豊田義博(とよだ・よしひろ)

リクルートワークス研究所主幹研究員

1959年、東京都生まれ。83年、東京大学理学部卒業後、リクルートに入社。就職ジャーナル、リクルートブック、「Works」の編集長を経て、現在に至る。20代の就職実態・キャリア観・仕事観、新卒採用・就職、大学時代の経験・学習などの調査研究に携わる。著書に『なぜ若手社員は「指示待ち」を選ぶのか?』(PHPビジネス新書)、『若手社員が育たない。』『就活エリートの迷走』(以上、ちくま新書)、『「上司」不要論。』(東洋経済新報社)などがある。

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