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すべてが微妙に「ピント外れ」(ジンバブエ)

2017年12月05日 公開
2018年01月05日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(28)石澤義裕(デザイナー)

ドヤ顔で迫る「塩抜きモーガン」

「罰金ですわー」

お宝を見つけちゃった〜みたいな嬉しそうな顔で言うんですね、おまわりさん。

ビクトリアフォールズの100メートル手前の路上の検問で。

「ほらっ、ここのライトが点かないでしょう?」

ナンバープレートの上を指さすんです、そうとう得意げに、鼻の穴をおっ広げて。

そんなところにライトなんかないでしょうよって、文句を垂れながら覗いたら、あるんです、豆電球みたいに小さいのが。で、運転席でライトをオンオフしても反応がない。

「ね、電球が切れてる」

おまわりさん、満面のドヤ顔。モーガン・フリーマンを50歳若くして、塩っけを抜いた目鼻立ちで、瞳がキラッキラ。

いやいやいや、塩抜きモーガンさん、こんなところのライトなんかどうでもいぐね?

今、まっ昼間ですよ。太陽、全力で出てるじゃないですか。雲ないし。正直、眩しくて目が痛いよね。

どう考えてもライトなんか要らないでしょう。

ほかの車だって、こんなところの電球なんかつきっこないですよ。うちのより、ボロいのばっかだし。

「じゃあ一緒に調べようか、ほかの車?」

ニヤニヤしながら言うものだから、即答で「Why not!」。生まれて初めて使いましたよ、「Why not!」。勢い余って「Of course! Sure!」と、知ってる「もちろん」系を全部くっ付けて、2度も繰り返して。

 

プレートよりも「豆電球」が大事!?

で、立ちました、道路の真ん中に並んで。

Tシャツ短パン、サンダル、ベタベタのアジア顔で。

どう見ても部外者だけど、違反者を検挙したい使命感は誰よりもあります。身銭がかかってますからね。

塩抜きモーガンが車を止めて、筆者がナンバープレートを覗き込む役割分担。

「運転手さん、ライトを点けてくれるー?」

ピカっ!

点くんです。

次の車も、その次も、その次の次も。すべて。みなさんお揃いで車検帰りなの?ってくらい。

「ねー、みんな点くんですよ」

ほっぺたに爪を食い込ませて360度つねりたいくらい憎たらしい、にやけた顔!

最後にチェックした車なんて、あれですよ、ライトが点くどころの騒ぎじゃないです、ナンバープレートそのものがない!

それなのに、「はい、オッケーでーす。ご協力ありがとうございましたー!」

モーーーーガン、Noooooooo!!!!!

ぜんっっっっぜんオッケーじゃない!

よく聞いて。主客だか本末だかがひっくり返ってる。完全に裏返ってる。ナンバープレートがないのがお咎めなしで、プレートを照らすライトがないと罰金って、どんだけピントがずれてんですか? 俺は怪しくない!って叫んでいる、全裸のおっさんみたいなものじゃないですか!

ってなことを訴えたかったのですが、犬以上猿以下の英語力。その辺を歩いているイボイノシシにすら伝わらないわけです。

罰金という名の賄賂かもしれないので、

「警察署の建物の中で、クレジットカードじゃなきゃ払いませんっ!」

啖呵を切ったものの、

Sure♪

歌うように軽い返事をいただいて警察署に連れ込まれ、サクっとカードを切らされたのです。

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著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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