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疲れを溜めない「戦略的『睡眠』習慣」とは?

2017年12月21日 公開
2023年01月23日 更新

<連載>MBA医師が教える 40代からの「疲れリセット」術(2)裴英洙(医師/ハイズ代表取締役社長)

裴英洙

通勤時間のうたた寝は疲れを増やすだけ

 一方、40代は「眠る力」が落ちてくる時期でもあります。

 疲れているはずなのに、眠れない・途中で起きてしまう・まだ暗い早朝に目が覚める、といった変化が表われてくるのです。

 その原因はまだ完全には解明されていませんが、主因はホルモンバランスが崩れて、眠気を誘うホルモン「メラトニン」の分泌が乱れてくるのが一因といわれています。さらにその原因となるのが、ホルモンを作り出す内分泌器官の機能低下。加齢とともに筋肉量が落ちるのと同じく、内臓の力も若い頃のようにはいかないのです。

 内臓の力といえば、胃腸の消化力低下も睡眠に影響します。胃がもたれて眠れないという夜を、多くの方がしばしば経験されるでしょう。これも、眠りの質を下げる一因となります。眠る前の暴飲暴食は消化管の負担を強いるだけでなく、胃もたれなどの不快感の原因になるので、40代を超えたら避けるように心がけましょう。

 今、40代の皆さんに必要なのは、こうした現実を受け入れつつ、それに対抗しうる「眠りの知恵」をつけることです。

 たとえば就寝後の胃もたれを避けるなら、脂っぽい食事を避ける、寝る直前には食べない、残業する日は早めの夕食を摂り、就寝前はホットミルク1杯で済ませる、などが賢い方法です。

 また、眠りにまつわる「思い込み」を解くことも大事です。

 たとえば朝の通勤電車。シートに座ってこんこんと眠るビジネスマンをよく目にしますが、これでは疲れは取れません。かえってだるくなったり、首や肩が凝ったりするはずです。

 なぜなら座った姿勢や不自然な姿勢で眠ると、頭の重さが首や肩に集中してかかるからです。加えて、起きるタイミングを自分でコントロールできないのも問題。深い眠りの状態であるノンレム睡眠の真っ最中に目的地に着いてしまうと、ひどい倦怠感を味わうことになります。寝不足は通勤電車ではなく、前後の睡眠時間で調整しましょう。その他、40代によく見られる間違いは、眠りが浅くなったことに焦りを覚えてしまうこと。夜中に目が覚めたとき過剰にナーバスになり、かえって目が冴え、さらに焦る、という悪循環に陥る人は少なくありません。

 そんなときは無理に眠ろうとせず、ぼんやりと目を閉じたまま横になりましょう。布団から出るにしても、「せっかくだからこの時間に仕事をしよう」などと思わず、ただボーッと過ごしましょう。「ボーッとする」こともまた、頭や心の疲れを取るためには欠かせない時間なのです。

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著者紹介

裴 英洙(はい・えいしゅ)

ハイズ〔株〕代表取締役社長/医師/医学博士/MBA

1972年、奈良県生まれ。金沢大学医学部卒業後、金沢大学第一外科に勤務。医師として働きながら、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネス・スクール)を首席修了。ビジネス・スクール在学中に、医療機関再生コンサルティング会社を設立。現在も医師として臨床業務をしつつ、医療機関経営に関するアドバイスを行なう。著書に、『一流の睡眠「MBA×コンサルタント」の医師が教える快眠戦略』(ダイヤモンド社)など。

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