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【今週の「気になる本」】『ビューティフルピープル・パーフェクトワールド』

2018年04月06日 公開

坂井 恵理/(IKKI COMIX)

「かわいいは作れる」時代の反動か?

 今回は、『ビューティフルピープル・パーフェクトワールド』という漫画を紹介します。

 舞台は、美容整形の技術が発達し、誰もが美しさを簡単に手に入れられる近未来の日本。「憧れの存在と同じ姿になりたい」「愛する人の望む姿になりたい」「若さを保ちたい」――、様々な理由で美容整形を繰り返す人々が織りなす人間ドラマをまとめた短編集です。

 特に印象に残ったのは「あえて美容整形しない女の子」が登場するお話でした。美容整形が当たり前になった世界では、生まれたままの容姿でいることのほうが珍しい。その希少価値をよく理解しているからこそ、その女の子はあえて化粧もせずに素のままでいるのです。ですから、自分の顔をいじろうと思ったこともありません。

 実は、この漫画と同じ現象が現実にも起こっています。最近巷では「すっぴん女子カフェバー」が流行っているのだそうです。「すっぴん風メイク」ではなく、リアルすっぴん。ガンガン厚盛りした女性に気圧されたオジ様が、女性の素の姿に癒されようと殺到しているのだといいます。整形メイクやアプリSNOWなど、「盛ってナンボ」の時代にあえて顔を作らない。「人工的な美しさ」がインフレ状態になることで、「素朴なリアルさ」に価値が生まれるという需要と供給の関係に複雑な思いがしました。

 『主に泣いてます』や『累 -かさね-』など、容姿の美醜を題材にした良作はたくさんあります。ただ、中でもこの漫画は単純にエンターテインメントとして面白いだけでなく、不思議な余韻のある作品だったので、ここでご紹介しました。何かの折に、手に取ってみてもらえれば幸いです。

 

執筆(S/N)

 

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