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【連載】藤原和博 45歳の教科書(2)

2018年04月15日 公開
2023年03月23日 更新

藤原和博(教育改革実践家)

AI時代を生き抜くカギは「情報編集力」にある!

新卒から70歳まで働くとすると、 45歳がちょうど折り返し地点。この連載では、70歳までのキャリアを見越した働き方と生き方について、リクルートを経て40代から民間校長として教育の世界に新たな挑戦を始めた藤原和博氏にアドバイスをいただく。第2回目は、変革する時代に対応するために伸ばすべきスキルについてうかがった。<取材・構成 甲斐ゆかり(サードアイ)、写真撮影=清水茂>

 

 

自分の仕事を「時給」に換算する

残業削減、ワーク・ライフ・バランスなどが話題になっていますが、自分のキャリアを見つめるときに私がいつも提案しているのは、今の仕事を、「時給」に換算してみることです。

日本の時給は、コンビニや飲食店でのアルバイトの1000円前後からマッキンゼーのシニアコンサルタントの10万円前後まで、百倍の差の間のどこかに当てはまります。ちなみにサラリーマンは、平社員から取締役までだいたい2000~5000円です。1万円以上(エキスパート)、あるいはそれより上(プロ)を目指すなら、組織内での役職や月給よりも、時間あたりの市場価値を意識すべきです。

また、労働時間と賃金のバランスも検討が必要です。たとえ月給が2割上がったとしても、3割長く働いていたとしたら、効率は悪化していることになります。「だったら時間あたりの効率を高め、時給を上げよう」という発想に自然となるでしょう。「もっと稼ぐには、もっと働かないと」というのは、経済が拡大し、何もしなくても全員の時給が自動的に上がっていった成長社会の発想です。

成熟社会では、いかに効率よく仕事を終わらせ、できた時間でどう自分のキャリアを充実させられるかが勝負になってきます。時給で考えることで、自分のための「働き方改革」ができるのです。そこで今回は、成熟社会での「生き残り」に必要なスキルについて考えてみます。

 

AI時代にも「残る仕事」とは何か

今後、AIが急速に発達するにつれ、人間がしていた仕事がどんどんAIを搭載したロボットにとって代わられ、やがて人間の脅威になるのではないかと議論されています。では、どんな仕事がなくなり、どんな仕事が残るのでしょうか。「鉄道」を例に考えてみましょう。

駅の改札にはかつて、切符に鋏を入れる「切符切り」の仕事をする人がいました。しかし自動改札の導入で姿を消し、今では、改札はスマホをかざせば通れるものになっています。「運転士」の仕事も、コンピュータ制御による無人運転の導入が進めば必要なくなりそうです。

それに対して、「車掌」の仕事は意外と生き残ると考えられています。急病人の対応などの突発的な事態や想定外の状況が発生した場合、柔軟に対応できるロボットが開発されるには、まだ相当な時間がかかるからです。

このように考えると、どういう仕事が生き残るかが見えてきます。AIが高度化するほど、人はより人間らしい仕事をするようになり、人間としてより必要な智恵や力、人にしかないぬくもりが求められていくのです。

なお、一つの仕事の中にも「AIに代わられる部分」と「生き残る部分」が存在します。自分が今やっている仕事がどちらの部分にあてはまるのか、よくよく考える必要があるでしょう。

 

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著者紹介

藤原和博(ふじはら・かずひろ)

教育改革実践家

1955年、東京都生まれ。78年、東京大学卒業後、〔株〕リクルートに入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任。メディアファクトリーの創業も手がける。93年よりヨーロッパ駐在。96年、同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校の校長を務める。08~11年、橋下徹大阪府知事特別顧問。14年から佐賀県武雄市アドバイザー。16年から奈良市立一条高校校長。『藤原先生、これからの働き方について教えてください。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、著書多数。

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