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定年前から始める自宅&実家の片づけのコツ

2018年05月30日 公開
2023年08月24日 更新

古堅純子(幸せ住空間セラピスト)

 

「こんなものいらないんじゃない?」は禁句

 もう一つ、早めに始めたいのが実家の片づけです。親が大量のものを残し、片づけに子供が苦労したり、遺品整理が原因で家族がもめたりする様子をたくさん見てきました。

 親世代が片づけられないのは、ものが捨てられない“もったいない精神”に加えて、年齢も無関係ではありません。いくらきれい好きな人でも、高齢になるにつれ身体の自由が利かなくなったり、認知症などで不潔の概念が抜け落ちたりして、次第に掃除が行き届かなくなります。

 また、高齢者の場合、「孤独」もものを増やす深刻な心理的要因です。誰ともコミュニケーションがない人は、寂しさを埋めるためにものを溜め込んでしまいます。今、社会問題となっているゴミ屋敷に、高齢者の一人暮らしが多いのもそれが理由ではないでしょうか。

 実家の片づけは、親が元気なうちに始めるのが理想ですが、親に強制してはいけません。家の中のものはその人そのものでもあり、簡単には手放せないことを理解する必要があります。よく高齢の親に向かって「こんなものいらないんじゃない?」「こんなガラクタばかり溜め込んで!」などと非難したり、入院などで留守の間に勝手に処分したりする人がいます。それはその人を否定することと同じで、相手を頑なにさせるだけです。

 ある一人暮らしの高齢女性は、大量の食器を大事に保管していました。おそらく娘さんのために料理をたくさん作ってあげたいのでしょう。「料理が好きなんですね」と私が言うと、とても嬉しそうでした。「でもこんなにお皿いる?」と聞くと、「そうね、もういらないわね」と自分で決められました。

 どこかで片づけたい気持ちはあっても、片づけられないのは寂しいからです。話にきちんと耳を傾ければ、本人の心が満たされ、処分する決心がつきます。親子のコミュニケーションは簡単なようで難しいものですが、親の気持ちに寄り添って話を聞くことを心がけてください。

 生前整理とは、「ものを捨てる」ことではなく、「これからの暮らしを快適にする」ためのポジティブな作業。ものを整理すれば生き方が変わります。人生百年時代を迎え、これから先も長い人生が待っています。その時間を幸せで快適なものにするためにも、早めに生前整理に取りかかりましょう。

≪『THE21』2018年5月号より≫
≪取材・構成:前田はるみ≫

著者紹介

古堅純子(ふるかた・じゅんこ)

幸せ住空間セラピスト

1998年、老舗の家事代行サービスに入社。2,000 軒以上の家を訪れて整理収納のメソッドと技術を習得する。個人宅や企業の整理収納コンサルティング、収納サービスを提供するかたわら、大手住宅機器メーカーの収納開発に協力した実績もある。著書に、『定年前にはじめる生前整理 人生後半が変わる4ステップ』(講談社+α新書)など。

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