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「投資レジェンド」が教える、株を買うべき会社の見分け方

2018年09月18日 公開
2023年03月14日 更新

藤野英人(レオス・キャピタルワークス〔株〕代表取締役社長)

トップのオーナーシップをサイトで見極める方法

ウェブサイトを見るときはもう一つ注目してほしいポイントがあります。それは、「経営者としてのオーナーシップ」です。

それは、たとえばウェブサイトの社長のあいさつ文に表れます。私たちの調査では、あいさつ文の主語が「当社・弊社」となっている会社よりも「私・私たち」となっている会社のほうが、株価のパフォーマンスが良いのです。おそらくこれは、経営者としてのオーナーシップ、つまり自分が当事者だという考えを社長が持っているかの違いでしょう。社長が「当社・弊社」と言っているのは、責任から逃げている表れかもしれません。

ちょっと変わった見方ですが、社長の写真を見て「この人がラーメン店を経営したら、儲けることができるか」を想像してみるのも良い方法です。創業系の優秀な経営者は、ラーメン店を繁盛店にできそうな雰囲気がある、と私は思います。たとえば、もしもソフトバンクグループの孫正義会長兼社長やトヨタ自動車の豊田章男社長がラーメン店の店主だったとしたら、繁盛店にできそうな気がしませんか。

ラーメン店を成功させるには、総合力が必要です。おいしいラーメンを作ってお客様に提供するだけでなく、商品開発や価格設定、従業員やアルバイトの採用・育成・管理、宣伝・集客などをしなければなりません。そうした「商売人」としての覚悟が顔に表われるから、前述した「力のある創業系社長はラーメン店が似合う」法則が成り立つのだと思います。

オーナーシップに関わることでは、社長の保有株比率が高い会社のほうが、より株価が上がりやすいとも言えます。最近実施した調査で、社長の保有株比率が10%以上、5%以上、0%の会社の株価を比較しました。結果、社長の保有株比率が10%以上の会社の株価パフォーマンスが最も高くなったのです。

ここまでの話を整理すると、会社のウェブサイトに社長や役員の写真が載っていること、社長のあいさつの主語が「私・私たち」になっていること、社長がラーメン店をできそうな人であること、そして社長の保有株比率が10%以上であること。もしこの4つの条件がそろっている会社があれば、なかなか期待できる投資先だと思います。

他にも、もしその会社に勤務する友人・知人がいれば、「自分の会社が好きか」と聞いてみるのも良いでしょう。自分の会社を好きな社員が多い企業は伸びると言えます。 

さらに「人」に関して言えば、社員の健康を重視していることも、伸びる会社の条件です。

私は5年程前から「健康経営銘柄」の基準検討委員を務めています。経済産業省が東京証券取引所と共同で、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む上場企業を選定しているのです。

この健康経営と株価には確かな連動性があります。社長や社員が健康経営に対する重要性を外部に表明している会社は業績・株価ともに良好です。社員が健康になるための費用を投資と捉え、そこにきちんとコストをかけている会社は、人を大事にしていると言えるからです。

 

初めての株式投資で注意すべき2つのこと

ここまで読んでいただけたら、少し株式投資のイメージが変わったかもしれません。「株式投資を始めてみようか」と思った方には、ぜひ少額から始めて慣れることをお勧めします。

最初に投資に充てるべき金額は人によって異なりますが、「手に汗をかかない」程の金額がいいでしょう。たとえば、一千万円の預金を持っている人の場合、10万円程度ならば投資に回してもいいと思えるのではないでしょうか。逆に、預金が100万円の人は、10万円でも手に汗をかくかもしれません。正解はないので、自身の手持ちの資金と相談してよく考えましょう。

実際に株式を売買するにあたってのアドバイスは、まず、「簿価(帳簿価格。会計帳簿に記入された資産や負債の評価額)を気にせず、時価で考えること」です。簿価に対して基準価格が上がった・下がったと一喜一憂するのではなく、「今」の価格をどう評価するかを考えましょう。

もう一つは、「よくわからない会社には投資をしない」ことです。ここで言う「よくわからない会社」とは、事業内容がイメージできないという意味です。有名だからといって事業内容を理解できていない会社に投資をすると、もし株価が下がっても、理由がわからないままでしょう。

株価の変動の理由がわかれば、次につながる学びになります。投資では「勝つか負けるか」ではなく、「勝つか学ぶか」と思えることが大事なのです。

 

<『THE21』2018年9月号より>

著者紹介

藤野英人(ふじの・ひでと)

レオス・キャピタルワークス〔株〕代表取締役社長・最高投資責任者

1966年、富山県生まれ。90年、早稲田大学卒業後、国内・外資大手投資運用会社でファンドマネジャーを歴任後、2003 年レオス・キャピタルワークス創業。主に日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資教育にも注力しており、明治大学商学部兼任講師、JPX アカデミーフェローを長年務める。一般社団法人投資信託協会理事。主な著書に、『投資レジェンドが教えるヤバい会社』(日経ビジネス人文庫)、『さらば、GG資本主義』(光文社新書)などがある。

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