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毅然として戦う!アフリカにブシドーを見た(タンザニア)

2018年08月04日 公開
2018年08月07日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(36)石澤義裕(デザイナー)

「ノープロブレム」に見るタンザニア男の美学

先日、「野生のエルザ」の続編の「永遠のエルザ」で有名なセレンゲティ国立公園を訪ねました。

ガイドのおじさんZ氏は、この道10年のベテランです。

マグフリ大統領に似た気骨があり、事なかれ主義的曖昧さがなく、理屈はどうあれ、言葉少なく筋を通します。

アフリカでは珍しいタイプです。

 

夜、テントにZ氏が訪ねてきました。

「ここは蚊が多いので、テントはしっかりと閉めてください」

あ、そうですか、でも、このテント、ファスナーが閉まりません。

「どれどれ……、あ、壊れていますね」

「けど、No Problem です!」

え? 蚊が多いんですよね……

「No Problem!」

蚊が……

「No Problem!」

惚れちゃいそうなくらい、堂々とした臨機応変な朝令暮改です。

 

アメリカ人vs.タンザニア流ツバメ返し

ブレのない彼の態度は、アメリカ人には通用しませんでした。

マサイ族の村でのこと。

ツアー客のアメリカ人女性が、子どもたちに食べ物を与えています。

それを見つけた件のZ氏、

「子どもたちに食べ物を与えないでください」

お客さんに注意するとは、たいした度胸です。しかも相手はアメリカ人。

「子どもたちが学校へ行かなくなり、ここに立つようになるのです」

「レンジャーに見つかったら、罰金です」

背筋を伸ばし、毅然とした態度でピシャリを言い放ちます。

しかし、あっさりと返す刀のアメリカ人。

「あら、罰金は払うわよ」

1ミリグラムも意に介さず、空気も読まず、食べ物を配り続ける彼女です。

仁義なき暴虐武人を眺めながら、黙って佇むZ氏の心中は如何許りか。

負けるな、頑張れ!

密かに、支持率がアップするZ氏です。

 

翌日、Z氏のつばめ返しが炸裂しました。

夜、アメリカ人女性が絶叫。

「予約したツアー内容と違うじゃないの!」

「楽しみにしていた湖はいつ行くの!」

どうやら似て非なるツアーに組み込まれていたようで、確かにこのツアーは湖へ向かいません。

Z氏の責任というより、ツアーを手配した旅行代理店のミスです。

食事もとらずに激怒する彼女は、激しくZ氏を攻め立てます。

しかし、事も無げに言い放った彼のひと言。

「No Problem!」

ひと言のお詫びもなく、言い訳もなく、代案もない、No Problem。

鮮やかな「意に介さず返し」。

火に油を注いだ気がしますが、火を消さずに、No Problem。

炎上しても、No Problem。

すごいものを見せていただきました、支持率は下がったけど。

This is Africa.


ゴミっぽい汚い民芸品を1500円で売り込む厚かましさ。マサイ族ブランドに奢っていませんか?

著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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