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アイデアの種が生まれる「5冊同時併読」読書法

2018年10月17日 公開

嶋 浩一郎(博報堂ケトル社長)

読後に「付箋だらけ」になる本たち

クリエイティブディレクターとして広告業界の第一線で活躍する嶋浩一郎氏は、読書家としても有名。書店経営など「本」に絡んだ仕事も多い。その読書スタイルは、仕事で読む本とは別に、常に5冊を選んで併読するという。読んだ本をどのようにアイデアにつなげ、仕事に活かしているのか。(取材・構成=林加愛、写真撮影=まるやゆういち)

 

読書で得た情報同士が化学反応を起こす!

広告制作の第一線で、日々クリエイティブな企画を生み出し続ける嶋浩一郎氏。その読書量は、実に膨大だ。仕事の資料として読む書籍が月に約30冊、加えて自らの楽しみとして、5冊を並行させて読むという。

「会社のデスク、カバンの中、ベッド脇やトイレの中などにいつも本があって、1冊読み終えればまた新たな1冊を加えます。こうして5冊を常時グルグル回しています」

この併読スタイルは、嶋氏のアイデア創出源になっている。

「『アイデアのつくり方』の著者、J・W・ヤングは『アイデアとは、既知の情報の組み合わせである』と言っています。ならば、頭の中の情報量を多くして、多彩な組み合わせができるほど企画力も高まると言えます。その意味で、読書は強い味方です」

数ある情報ツールの中でも書籍を重視するのはなぜか。

「知りたい分野について、体系的に知識を得られるからです。人との会話は、鮮度や臨場感においては本より上ですが、迂回や脱線も伴います。また、ネットの情報は信頼性の高いものもありますが、まだまだ玉石混交。正確な知識を順序立てて得るには、やはり本が最強です」

嶋氏が好んで読むジャンルは歴史や政治経済、物理学や生物学など多岐にわたるが、いずれも仕事に直結しないテーマで占められている。

「私は常々、『アイデアはアサッテの方向からやって来る』と考えています。イノベーティブなアイデアは、当該テーマを掘り下げるだけでは出て来ない。むしろ、無関係な分野の情報がヒントになることが多いのです。取り込む範囲が広いほど、かけ離れた情報同士がふれあい、そこにユニークな交配が起こりやすくなります」

 

「興味のない本」をあえて読む理由とは

多彩なジャンルを読み漁っていると、不思議と似たキーワードに出会うこともあるという。

「発明の本を読んでいて『フォードがエジソンのファンだった』と知った翌日、ペレの伝記に『彼の本名はエジソンである』という話が出てきました。彼が生まれた年に、その村に電球が来たからなのだそうです。こうした偶然がしばしば起こるのも、面白い現象ですね」

併読という習慣の中に、嶋氏はいくつかの「ルール」を設けている。

「『5冊のうち2冊は、興味の範囲外にある本にする』と決めています。好きなジャンルの本ばかり読んでいては、情報の範囲が狭まるからです。本来なら選ばない本をあえて手に取るようにしています」

ちなみに日常生活でも、このルールを積極的に取り入れているそうだ。

「修行と称して、自分の好みに従っていたら行かない場に月1回は足を運ぶようにしています。たとえば、地下アイドルのライブや演歌歌手のディナーショー。この前は昼ドラで大ヒットした『昼顔』の映画版を観に行きました。上戸彩のセリフにドキッとしたり、毎回様々な発見があるんです」

そのような思わぬ発見は、読書でも起こるという。

「最近では地層の本が非常に面白く、興味のある分野に昇格しました。このように『異分子』的な本に触れ続けると、興味の領域が拡張されます。そうなれば、またさらに興味の外に幅を広げて読む、というわけです」

 

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著者紹介

嶋 浩一郎(しま・こういちろう)

博報堂ケトル代表取締役社長

1968年生まれ。93年、〔株〕博報堂入社。企業のPR活動に携わり、2002~04年には雑誌『広告』の編集長を務める。04年、「本屋大賞」の立ち上げに参画。06年、既存の手法にとらわれないコミュニケーションを実施する㈱博報堂ケトルを設立。『アイデアはあさっての方向からやってくる』(日経BP社)など、著書多数。

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