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【今週の「気になる本」】『恐怖の構造』

2018年08月27日 公開

平山夢明著/幻冬舎新書

笑いと恐怖は紙一重

 今日ご紹介する1冊は、『恐怖の構造』です。本書を読んで、私の中で長い間モヤモヤしていた疑問が解決できました。

 本書は、ホラー小説家である平山夢明氏が、恐怖とは何か、なぜ人は恐怖に惹かれるのかを解説した1冊。恐怖を商売道具にしているホラー小説家が、恐怖という感情について分析・分類しています。さらに、ホラー小説の作り方まで教えてくれるという何とも有難い本です。

 モヤモヤが晴れるきっかけになったのは「笑いと恐怖は紙一重である」という一節。極上のコメディと最恐のホラーは表裏一体であるというのです。

 本書を通じて、なぜ「アウトレイジ」が笑える映画なのかが理解できました。公開から今まで、何回もヘビロテしているのですが、笑える理由を言葉にできなかったのです。

 なぜ、バイオレンスだらけの極道映画が笑えるのか?

 本書の言葉を借りれば、「アウトレイジ」が笑える理由は、次のように説明できます。

理由1 絶妙な緊張と緩和のバランス

 ホラーにはいくつか欠かせない要素があると解説しています。その1つが、「緊張と緩和のバランス」です。以下引用。

「人間というのは、緊張しているあいだは息を止める習性があります。まさしく『息を呑む』なんて表現する、あの状態です。しかし、それがあまりに長く続くと神経が疲れて、かえって集中できなくなってしまうんです。そこで、途中に緩和を入れることにより、無意識のうちに来たるべき次の恐怖へ備えてもらうことができるんですね」

 確かに、ホラーには「幽霊が来る!」と思わせておいて、登場人物に何も起こらない。そして、安堵したところで登場人物に襲いかかるパターンがありますね。

 一方、アウトレイジでは、裏切り者を処刑するシーンなのに、突然「おい、野球やろうか」なんてセリフが出てくる。緊迫した空気なのに間が抜けてしまい、つい笑ってしまうのです。でも、その後悲惨な死に方をするので、すぐ恐怖で身が引き締まるのですが……。

 観客の感情を巧みにコントロールする点に、面白さがあったんだと改めて感動しました。

理由2 突き抜けた恐怖が笑いを生む

 さらに、人間は突き抜けた恐怖を前に笑うしかなくなると解説しています。以下引用。

「1920年代に心理学者のカーネイ・ランディスは、被験者に生きたネズミの頭部を切断させ、そのときの表情を写真撮影する実験をおこないました。すると写真には、被験者たちの笑顔が記録されていたのです」

 人間には過剰な恐怖にさらされると、目の前の現実を受け止めきれずに笑いで処理しようとする性質があるのだそうです。

 余談ですが、私はエレベーター内で沈黙が続くと、笑いがこみあげてきます。下を向いて堪えていますが。取材した精神科医の先生に聞いてみると、これは「不安」の現われなんだそうです。閉ざされた空間で、何人もの人々が押し黙っている緊張に耐えられない。だから、その不安を笑いで中和させようとする。うーん、納得です。

 一種の狂気だと思いますが、アウトレイジはそれが満載です。

 しかも、日常の地続きで殺しが行なわれているかのような自然さなので、それがもう余計に怖い(マンションやレストラン、歯医者、サウナで襲撃されるので、どこでもドンパチが始まる)。狂気がすぐ横にあって、他人事ではない感じがあの映画の魅力を際立たせているのでしょうか。

 まぁ、そもそもキャッチコピーが「全員悪人」ですし。映画のほとんどが、バイオレンスシーンで、なかなか刺激的です。

 名作を浅い分析で辱めてしまい恐縮です。もちろん、「アウトレイジ」の面白さはこれだけではありませんよ。書評なのに、「アウトレイジ」分析になっちゃったな。まあいいか。

 ともあれ、本書を読めば、恐怖という感情を通じ、人間が「どんなものに惹かれるのか、その理由はなぜか」がざっとわかるはず。物語の楽しみ方も、今までよりも深くなるのではないでしょうか。

執筆:S/N

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