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富裕層・機関投資家と同じ資産運用が誰でもできる「6つのステップ」

2018年12月17日 公開
2023年03月14日 更新

柴山和久(ウェルスナビCEO)

雑音に惑わされずに「長期・分散・積立」で投資するべし


写真撮影:まるやゆういち

 

 日英の財務省で働いた後、マッキンゼーで資産10兆円規模の機関投資家をサポートした経験を持つ柴山和久氏。現在は、世界水準の資産運用を自動化したサービス『ウェルスナビ』の運営会社のCEOとして活躍している。今年11月には著書『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』(ダイヤモンド社)も上梓した柴山氏に、一般の個人が世界の富裕層や機関投資家と同じように投資をするための考え方を聞いた。

 

ノルウェー政府年金基金の運用成績は、なぜ高いのか?

「富裕層や機関投資家は、一般の人には使えない手法で資産運用をしているに違いない」。そう思っている人が多いかもしれません。

 しかし、実際には、そんなことはありません。資産が100兆円規模の機関投資家がしていることは、資産が100万円規模の個人でもできることなのです。

 著書『これからの投資の思考法』では、世界最大規模の約110兆円を運用し、1997年末~2017年末の20年間で+226%(年平均+6.1%)という高い運用成績を残しているノルウェー政府年金基金の例を挙げました。

 ノルウェー政府年金基金の資産運用の特徴の一つ目は、長期的なリターンの最大化を狙っていることです。

 資産運用というと、短期的な市場の動きを予測して利益を得るものというイメージを持っている人もいるかもしれませんが、どんな専門家にとっても、それは非常に困難です。ノルウェー政府年金基金も、リーマンショックが起こった2008年のリターンは-23.3%でした。過去20年間のリターンを見ると、マイナスだった年が4回あります。しかし、長期的に見ると、リターンが平準化されて、全体としては大きなプラスになっているのです。

 

 

 特徴の二つ目は、世界全体の様々な資産に幅広く分散投資していることです。2018年3月末現在のポートフォリオは、66%が株式、31%が債券、3%が不動産。株式は、72カ国の9,146銘柄に投資しています。

 投資する銘柄を増やすと、それだけリスクを分散できます。日本人で株式投資をしている人の多くは日本株だけを買っていますが、日本株だけでは、いくら銘柄数を増やしても、日本の経済動向の影響をまともに受けてしまいますから、世界中の銘柄に分散投資することが重要です。

 ただし、銘柄数を増やしたぶんだけ、リスクが下がるというわけではありません。『ウェルスナビ』は世界中の約1万1,000銘柄に分散投資していますが、約9,000銘柄に分散投資しているノルウェー政府年金基金とどちらがリスクが低いかといえば、大きくは変わりません。

 銘柄数をいくら増やしても、最終的には、市場自体が持っているリスクは引き受けなければなりませんから、さらなるリスク分散のためには、債券や不動産、あるいは金など、株式以外にも投資対象を広げる必要があります。投資対象を広げれば、それに伴ってコストも増えるので、現実的には、どこまで広げるかはコストと相談しながら、ということになります。

 ノルウェー政府年金基金の資産運用の特徴の三つ目は、積立をしていることです。ノルウェーには北海油田があり、そこから得られる利益を積み立てているのです。積立の効果については、のちほど説明します。

 

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著者紹介

柴山和久(しばやま・かずひさ)

ウェルスナビ〔株〕代表取締役CEO

1977年、群馬県生まれ。東京大学法学部卒業後、2000年に大蔵省(現・財務省)に入省。ハーバード大学で金融取引法を学び、ニューヨーク州弁護士登録。英国財務省への出向を経て、09年に財務省を退職。フランスのビジネススクールINSEADで金融工学を学び、10年にマッキンゼーに入社。ニューヨークに拠点を置く10兆円規模の機関投資家向けのリスク管理・資産運用プロジェクトに携わる。15年にウェルスナビ〔株〕を設立。16年にサービスを開始した。

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