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太陽ホールディングス「市場占有率5割のソルダーレジストに留まらず、総合化学企業へ」

2019年01月07日 公開

【経営トップに聞く】佐藤英志(太陽ホールディングス社長)

【連載 経営トップに聞く】第12回 太陽ホールディングス〔株〕代表取締役社長 佐藤英志

 

 電子機器の中を見ると、電子部品を搭載し、電気回路が描かれた、緑色のプリント配線板がある。この緑色は、ソルダーレジストという、絶縁のためのインキだ。このソルダーレジストで世界トップシェアを誇るのが、太陽ホールディングス〔株〕である。電子部品用化学材料メーカーとして確固たる地位を築きながら、同社は近年、医療・医薬品、食糧、エネルギーという新たな事業領域へと進出した。1953年設立の同社の社長を2011年から務める佐藤英志氏に、その理由を聞いた。

 

「脱エレクトロニクス」の理由とは?

 ――御社はソルダーレジストで世界の5割以上のシェアを取っています。他社の追随を許さない強さの理由は、どこにあるのでしょうか?

 


ソルダーレジスト(左)と、それを使ったプリント配線板(右)

 

佐藤 プリント配線板が現在の製造方法になった市場の黎明期である1985年に、ソルダーレジストの技術の基本特許を出願し、今では考えられないほど広範囲の特許が認められたため、技術的優位を確立できました。

 すでに基本特許は切れていますが、お客様が新しいプリント配線板を作ろうとするとき、最初に相談をするのは、シェアの高い我々です。

 また、お客様のご要望にきめ細かく対応をしてきたことや海外展開が早かったことも、当社の強みだと考えています。

 ――エレクトロニス分野では、今後のさらなる成長ため、どのような施策をしているのでしょうか?

佐藤 ソルダーレジストの周辺領域の新規開発に取り組んでいる他、将来的にデバイスを自社で製造できないかも検討しています。

 継続的に新製品を生み出すためには研究開発体制の整備が重要ですから、基礎研究力の向上を図るとともに、迅速に事業化できる環境の構築もしています。新規事業を含め、すべての事業の要は人材ですから、学校との連携や設備の増強をはじめ、知識や技術を研鑽できる環境整備に惜しむことなく投資していきます。

 ――今回の取材場所は、太陽ホールディングの子会社として2017年に設立された医薬品メーカー・太陽ファルマ〔株〕のオフィスです。エレクトロニクス分野以外へと事業領域を広げた理由はなんでしょうか?

佐藤 ソルダーレジストの市場占有率が5割を超えているということは、スマートフォンやサーバーなど、ソルダーレジストが使われる最終製品の市場動向の影響を大きく受けるということでもあります。海外売上比率が8割に達しているので、為替相場の変動の影響も大きい。

 こうした外部要因の影響が大きい事業構造から脱却するために、総合化学企業へと飛躍することを決めました。

 ――新たな事業領域の一つとして、医療・医薬品を選んだ理由は?

佐藤 まず、エレクトロニクス分野以外の柱を作りたかったということがあります。リーマンショックのとき、真っ先に買われなくなったのがエレクトロニクス製品だったからです。

 一方、生活に絶対必要な食品などは、それほど影響をうけませんでした。それを見て、生活必需品の分野に進出したいと考えたのです。

 生活必需品の中でも、医療・医薬品分野は既存のノウハウを活かせますし、今後の成長も見込めます。

 ソルダーレジストも製薬も、粉状の原料を混ぜて練るという製造工程が非常に似ていて、親和性があるんです。原料の仕入れ先も同じところがありますし、分析機器も共通したものを使えます。ですから、既存のリソースを活用して、少ないリスクで参入できると判断しました。

 ――医療・医薬品分野は、新規参入のハードルが高いと思いますが……。

佐藤 3年かかりましたね。最終的には、中外製薬〔株〕から13の長期収載品(すでに特許が切れている、もしくは再審査期間が終了しており、同じ効能・効果を持つ後発医薬品の発売が可能となっている薬)の製造販売承認の承継という形で参入しました。いずれも、市販薬ではなく、医療用医薬品です。

 ――創薬はしない?

佐藤 再生医療など、投資額が比較的少なくて済む可能性のあるものについては、パートナー企業への投資というかたちで創薬も考えています。まだどの企業も強みを確立していない分野ですから、パートナーと組むことで、競争力を持てると思います。

 また、日本の医薬品メーカーで、日本向けの製品を海外で生産しているところはほとんどありませんから、当社はその仕組みを構築したいと考えています。アジアからの観光客が日本ブランドの薬を爆買いしているのですから、アジアのマーケットでの勝算も十分にあると思います。すでに、グローバルに展開するための戦略立案をする段階に入っています。

 ――食糧とエネルギーについては、進出した理由はなんでしょうか?

佐藤 食糧分野では、当社のグローバル展開のノウハウを活かして、将来的にはイチゴのハウスなど、植物工場のシステムをセットで世界に売っていくことを考え、国内での研究を進めています。そこで競合する他社とは、肥料や農薬といった、化学企業としての強みが活かせるポイントで差別化できるのではないかと思います。

 まだ大きなビジネスにはなりませんが、飼料用のコオロギを育てる施設も作りました。もともと昆虫の研究をしていて、農薬メーカーから当社に転職してきた技術者が「やりたい」と言うので始めたのです。昆虫は、将来のタンパク源として、FAO(国連食糧農業機関)も注目している食糧です。

 エネルギー分野については、CSRの面もありますが、自分たちが使うエネルギー分は再生可能エネルギーを生産しようということで、太陽光発電を行なっています。

 


2017年12月に開所した嵐山大沼水上太陽光発電所。発電した電力はすべて、太陽インキ製造埼玉工場の運営に利用されている

 

 ――エレクトロニクス分野以外へ進出したことについて、社員の反応はどうでしたか?

佐藤 イチゴの定植にボランティアで集まったりして、楽しんでくれているみたいですよ(笑)。

 

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著者紹介

佐藤英志(さとう・えいじ)

太陽ホールディングス〔株〕代表取締役社長

1969年、東京都生まれ。中央大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。91年に監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)に入所。99年、会計・財務・税務コンサルティングを行なう〔株〕エスネットワークスを設立。2001年、太陽ホールディングス〔株〕の子会社・台湾太陽油墨股份有限公司監察人に就任。〔株〕有線ブロードネットワークス(現・〔株〕USEN)取締役・常務取締役、〔株〕ギャガ・コミュニケーションズ(現・ギャガ〔株〕)取締役副社長を歴任。08年、太陽インキ製造〔株〕(現・太陽ホールディングス〔株〕)社外取締役。09年、同社取締役。10年、同社代表取締役副社長。11年、同社代表取締役社長。

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