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【特別対談】「フィルムメーカーが化粧品をつくる」という前代未聞のチャレンジ

2019年01月08日 公開

古森重隆(富士フイルムホールディングス代表取締役会長・CEO)×江上剛(作家)

カニバリゼーションを恐れず、トップランナーを目指す

「本業消失」という非常事態の中、化粧品や医薬品など新たな分野へ果敢に挑戦し、見事、V字回復を成し遂げた富士フイルム。それをモデルにしたノンフィクション小説『奇跡の改革』が、この1月に発刊される。発刊を前に、トップとしてそのV字回復を成し遂げた富士フイルムホールディングス代表取締役会長・CEOの古森重隆氏と、『奇跡の改革』著者の江上剛氏との対談が実現。「前代未聞」の挑戦の裏にあった思いとは?

(取材・構成:杉山直隆、写真撮影:遠藤宏)

 

「自分たちがやらなければ、他の人がやるだけだ」

江上 本作は御社をモデルに書かせていただいた作品です。現実でも、富士フイルムは2000年頃から、デジタルカメラの普及によって、売上の約6割を占めていた写真フィルムの市場が急速に縮小するという、未曾有の危機に見舞われました。当事者の危機感は、小説の表現以上のことだったと思います。

古森 そうですね。ただ、突然、危機的な状況が襲いかかってきたわけではありません。かなり以前から、デジタルカメラの登場によって、写真フィルムの需要が縮小することは、わかっていたことです。我が社は、1976年に世界初の高感度カラーフィルム「F-Ⅱ400」を開発し、フィルムの性能と品質では世界一を自負していましたが、一方で、デジタル化の進展によって、我々の存在が根源から揺さぶられることも自覚していました。

そこで、フィルムを開発する一方で、デジタルカメラに関しても、1970年代から研究を始めていました。1988年に、世界初のフルデジタルカメラである「DS―1P」を開発。また、デジタルカメラだけでなく、レントゲン写真や印刷技術などのデジタル化も進めていました。

江上 他のフィルムメーカーがカニバリゼーション(自社製品同士が共食いし、売上を奪い合うこと)を恐れて、デジタルカメラの開発を躊躇したのとは対照的に、動き出しが早かったのですね。

古森 確かにそうですが、自分たちがやらなければ、他の人がやるだけです。どうせ誰かがやるのならば、自分たちが挑戦し、トップランナーになったほうが良い。そんな考えが社内にありました。

デジタルカメラの品質やコストはなかなかフィルムに追いつけませんでしたが、1998年に我々が開発した150万画素の「Finepix700」は、数万円の価格で初めて銀塩フィルムに匹敵した画質を持ったコンパクトデジタルカメラで、これがデジタルカメラ市場の火付け役となりました。撮像素子であるCCDを自社開発するなど、早くからデジタルカメラの開発を進めてきたことで、我々はそこから数年は、世界のデジタルカメラ市場で約30%のシェアを持つというリーディングカンパニーでした。

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著者紹介

古森重隆(こもり・しげたか)

富士フイルムホールディングス代表取締役会長・CEO

1939年旧満州生まれ。63年東京大学経済学部卒業後、富士写真フイルム(現富士フイルムホールディングス)に入社。96年~2000年富士フイルムヨーロッパ社長。2000年代表取締役社長、03年代表取締役社長兼CEOに就任。デジタル化の進展に対し、経営改革を断行し事業構造を大転換。液晶ディスプレイ材料や医療機器などの成長分野に注力し、業績をV字回復させた。12年6月から代表取締役会長兼CEO。公益財団法人日独協会会長。日蘭協会会長。07~08年NHK経営委員会委員長。

江上 剛(えがみ・ごう)

作家

1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。77年、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。人事、広報等を経て、築地支店長時代の2002年に『非情銀行』で作家デビュー。03年に同行を退職し、執筆生活に入る。テレビ番組などのコメンテーターとしても活躍中。著書に、『起死回生』(新潮社文庫)、『銀行告発』(光文社文庫)、『翼、ふたたび』(PHP研究所)など多数。

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