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【今週の「気になる本」】『創造された「故郷」 ケーニヒスベルクからカリーニングラードへ』

2019年05月03日 公開

ユーリー・コスチャショーフ著/岩波書店

ソ連によって「消された街」

新聞の一面の下のほうに、小さく細切れにされた書籍の広告欄があるのをご覧になったことがある人は多いと思います。

業界では「短冊」なんて言われたりもしますが、あの書籍広告欄を見るのが、私は結構好きなのです。

新聞の中面に掲載されているのは、まさに「ベストセラー!」という感じの派手な広告が多いのに対し、この欄にはかなりマニアックなものが多く、「誰が買うんだ!」と思わず突っ込みたくなる書籍が多々あるからです。

本書との出会いも、まさにこの欄でした。

『創造された故郷 ケーニヒスベルクからカリーニングラードへ』……かつてケーニヒスベルクと呼ばれたドイツ・プロイセンの街が、第二次世界大戦でソ連に占領され、その後、ソ連の街となっていく過程を丁寧に描いたという本書……。

 

令和の今、なぜこのテーマなのか。

日本人でこのテーマに関心がある人、どのくらいいるのか?

初版はどのくらい刷ったのか?

採算は取れるのか?

 

……そんな心配をしているうちに、勝手に「俺が買わずに誰が買う」という義侠心が湧き、つい購入していました。まさに思う壺。

結構な出費でしたが、本書はその出費に十分見合う内容です。

本書を読むと、ケーニヒスベルク/カリーニングラードが稀有な街であることが非常によくわかります。

ドイツの中でも常に辺境の飛び地であり、ロシアにとっても辺境の飛び地。

誕生時から今に至るまで、ずっと「飛び地」として、異文化の真ん中に浮かぶ島であることを義務づけられた街なのです。

その複雑な立ち位置が哲学者カントを生んだ土壌になったのかもしれない……などと考えると、興味は尽きません。

 

こうしたマニアックで、かつ汎用性のある知識と出合えることが、読書の醍醐味だと思います。

ただ、書店が減ってしまった今、こうした「偶然の出会い」が生まれにくい時代になっていることは確かでしょう。

新聞の小さな広告欄はその意味でも、注目すべき存在のように思います。

かつて新聞には、読者が自由にメッセージを載せられる「ひと言通信欄」みたいなものがあり、「〇〇へ、連絡請う。父より」といったプライベートなメッセージがずらりと並んでいたとか。

新聞に掲載されたマニアックな書籍の広告は、特定の読者に向けたプライベートなメッセージなのかもしれません。


執筆:Y村



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発売日:2019年07月10日
価格(税込):630円

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