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なぜあなたの情報は、AIに「筒抜け」なのか?

2019年06月14日 公開
2023年03月02日 更新

嶋田毅(グロービス経営大学院教授/グロービス出版局長)

 

人間が気づかない法則をAI が見出す

 昨今のビジネスで、データマイニングが最も活用されているのはマーケティングの分野です。顧客の属性や行動をデータからきめ細やかに分析することで、それぞれの顧客に合わせて適切なアプローチを取ろうという企業が増えています。

 最も古典的なデータマイニングからの発見は、アメリカのディスカウントショップにおける「ビールと使い捨ておむつは同時に購買されることが多い」という発見でしょう。これは、人間の直感ではなかなか気づきにくい発見です。

 後講釈では、「使い捨ておむつを買いに来た父親が、ついでにあわせてビールを買う傾向があった」などと説明はできますが、ポテト系のおやつとビールのような組み合わせではなく、使い捨ておむつとビールという組み合わせは、なかなか人間には仮説が立てられませんし、発見もできません。これが機械の力とも言えるでしょう。

 データマイニングは、「儲からない可能性の高い人間に来てほしくない業界」(例:保険会社)などでは、そうした顧客を避けるためのプロモーション(デマーケティング)にも活用されています。たとえば、データから「このタイプの顧客は事故を起こしやすい」と判断された顧客については、その保険会社を選ばなくするようなメッセージを含んだプロモーションなどを行うのです。

 

データの質と量を決めるのは、人間の課題

 では、有用な知見の発見は、すべて機械に任せればいいのかというと、そういうわけでもありません。現時点では、機械の側から「このようなデータが欲しいから、このようなセンサーを作ってくれ」といった要求をすることはありません。

 したがって、そこには相変わらず人間の知恵や洞察力が求められます。データの質を決めるのは人間なのです。

 データの量についても、これからセンサーの低価格化が進めば、量も自ずと増えていくでしょうが、今は完璧とは言えない状況です。当面は費用対効果を高めるためにも、「どのようなデータを取れば有益な示唆が得られそうか」という方向性を、人間がしっかりと考える必要があるのです。

 また、1つの会社があらゆるデータを集めようとしても、それは非効率です。どのような企業とパートナーシップを組むのがいいのかといった判断なども、データの質と量を上げる上では大事な課題となるでしょう。カード業界などでは古くから競合会社同士でも「ブラック顧客リスト」を共有したりしていましたが、同じように顧客データを共有することが、新たなWin-Winの関係をもたらすかもしれないのです。

 

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大量のデータがあれば、どんな人物像も割り出せる >

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