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【今週の「気になる本」】『駿河城御前試合』

2019年08月09日 公開

南條範夫著/徳間文庫

感情に囚われた「人」の残酷さ。血と狂気のエンターテインメント

寛永六年九月二十四日、駿府城・駿河大納言徳川忠長の面前にて開かれた御前試合。十一番の勝負は全て真剣を以て行なわれた。大国の領主が公に開いた御前試合としては他に例がなく、空前絶後の凄惨な結末となる……。

漫画『シグルイ』(山口貴由著、こちらも大変面白いのでお勧めである)の原作としても知られる本作。
暴君と化していた忠長は部下の諫言をも全く聞き入れずにこの試合を強行した……、というのはもちろん創作だが、忠長が精神に異常を来していたことや様々な暴挙、勘当・蟄居・自刃などは史実としても伝わっている。
時代小説や大河ドラマを愉しむポイントの一つに、こうした史実とフィクションの交わるポイントから空想の幅が広がることがあると私は思っている。

十一の試合のどれも結末の予測がつかない展開だが、個人的に特にお気に入りの三試合についてひと言ずつ感想を記しておく。

・第一試合 無明逆流れ
藤木源之助VS.伊良子清玄
藤木は隻腕、伊良子は盲目の剣士である。それぞれなぜそのハンディを背負うことになったのか、過去の描写で明らかになるのだが、彼らを見守る二人の女性も含めた因縁の対決ということがわかる。
ちなみに、『シグルイ』は基本的にこの第一試合を元に膨らませ、肉付けした漫画だ。この章のサブタイトルにもなっている「無明逆流れ」は伊良子の必殺技だが、名前も構えも最高にカッコいいので要注目である。マネしたくなるが、自分がやってもなかなかカッコよくできない。

・第二試合 被虐の受太刀
座波間左衛門VS.磯田きぬ
間左衛門は腕の立つ剣士だが、子供の頃に特殊性癖(ヒントはサブタイトルにあり)に目覚めてしまい、そのためにとんでもない戦い方をする。そのキャラクターがあまりにもぶっ飛んでいて、個人的に最も面白かったと思うのがこの試合だった。間左衛門の感情の描写が特に素晴らしく、著者の表現力の豊かさに感動を覚えた。

・第四試合 がま剣法
笹原修三郎VS.屈木頑之助
屈木は醜い男という設定なのだが、その「醜さ」についての描写が具体的で、ありありとイメージできる。ここも、著者の表現力の凄さを感じた部分である。
「ぶざまに肥った躯にひどく短い脚、両眼の間が著しく離れ、つぶれた鼻の下に大きな口がややつき出ている蒼黒い顔は、正にあだな通りガマを思わせるものがあった。」(以上、引用)
この屈木が舟木道場の一人娘・千加に想いを寄せたことから始まった悲劇が描かれている。

その他にも、十一すべての試合が先の読めない展開で、戦いに至るまでのそれぞれの背景にある人間ドラマや愛憎劇がある。劣情、恨み、執着……感情や因縁に囚われた「人」の描き方が秀逸な作品だと思う。


執筆:Nao(THE21編集部)



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