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企業生き残りの絶対条件「デジタルシフト」をいかに実現するか?

2019年10月08日 公開

鉢嶺登(オプトホールディング社長グループCEO)

GAFAの脅威に克つ人材になろう!

 

 デジタルシフトをリードするイノーベーションエージェンシー・〔株〕オプトホールディングは、十数年前に〔株〕電通のデジタルシフトを支援して以来、「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ〔株〕やソフトバンクグループ〔株〕、〔株〕日本経済新聞社などのデジタルシフトを支援してきた。デジタルシフトとは、「デジタル技術の活用を前提に、企業の在り方すべてを変革させること」を指す。同社の創業社長である鉢嶺登氏は、「デジタル技術が世界を覆うこの時代、企業の存続はデジタルであることが前提となる」と言う。では、企業をデジタルシフトするためには、いったい、どうすればいいのだろうか?

※本稿は、鉢嶺登著『GAFAに克つデジタルシフト』(日本経済新聞出版社)の一部を再編集したものです。

 

デジタルシフトを実現する「デジタル人材」4職種とは

 デジタル力は、これからの社員にとってはいわば基礎体力に当たるものである。デジタルシフトを担うデジタル人材は、デジタル力を付けたうえで、さらに高度な実務スキルを備えている必要がある。

 ここで言うデジタル人材とは、デジタルに関する実践的なスキルを備えており、それを活用してデジタルビジネスやプロダクトを自ら創造できる人材のことを指す。このデジタル人材がチームにいなければ、経営者がどんなにデジタルシフトを望んでも実現できない。

 事業内容によっても多少異なってくるが、基本的には下記のデジタル人材4職種が企業のデジタルシフトに必要である。(1)マーケター、(2)テクノロジスト、(3)クリエイター、(4)ビジネスプロデューサーである。

 以下、4職種について順を追って解説しよう。

 

顧客ニーズと行動を捉え、自社収益に変換する:マーケター

 マーケターとは文字通りマーケティングができる人材である。しかも、デジタルマーケティングも理解している人材である。マーケターはエンジニアのようにソフトウエアのプログラミングができる必要はない。データサイエンティストのようにデータを多変量解析にかけてビジネスのヒントを導出するスキルも必要ない。ただし、デジタル技術の価値を肌感覚で理解し、消費者が日々使っているデジタル技術を自ら使いこなす必要がある。これによってデジタルシフト時代を生きている消費者のユーザー心理を理解し、自社のマーケティング業務に活かすのである。

 本来の専門性を考えた場合、マーケティング部や広報宣伝部に所属する人材に求められるスキルである。しかし、ここではあえて広義にとり、全社員に求めるスキルとしてマーケティングスキルを挙げておきたい。

 資生堂は「プロ経営者」の代表である魚谷雅彦氏が社長に就任し、「全社員マーケターたれ」という掛け声の下で、社員に対するデジタルマーケティング教育を実施し、その一部はオプトグループが提供している。なお資生堂の魚谷氏は2020年度までの中期経営計画で、ビジネスや業務のデジタル化を最優先事項と位置付けて進めている。

 この資生堂の決断が発端となり、最近は大企業を中心に社員向けにデジタルマーケティング教育を施す企業が増えている。また、米国では経営=マーケティングと捉えられており、CDMO(チーフデジタルマーケティングオフィサー)の地位が向上しつつある。

 背景としては、ネットにおける消費者行動を捉えることが経営の最優先事項になってきているためだ。このネット時代の今、ネットにおける消費者行動を隅々まで把握し、ネット上での集客から顧客対応までを徹底しなければ、商品開発、製造、販売促進、物流、そして接客に至る事業を推進するバリューチェーンすべての対応を間違ってしまう可能性がある。

 ネット上での対応によってはビジネスモデルの根幹にも影響を与える。一見デジタルマーケティングに無関係に思える物流でさえも、今やユーザー接点として顧客満足度を高めるための重要な構成要素となっている。

 考えてみてほしい。ネットで注文した商品をどのような手法で、早さで、価格で、しかもストレスなく受け取れるのか。注文さえ受けられれば、あとは宅配業者にお任せしていれば良いと侮っていてはいけない。これからは顧客が注文してから商品をその手で受け取る瞬間に至るユーザーエクスペリエンス(体験)全体が満足度に大きな影響を与える。そのためにも、ネットで注文した商品の状況がいつでも確認できるようにしたり、ユーザー体験全体に気を配り、ユーザーが気付かないほどに自然なプロセスに磨き上げることが理想だ。そのためにも、私たちは消費者が日々どのようにネットを活用し生活しているのかを知る必要があるわけだ。

 また、全社員に求めるスキルとしてマーケティングを挙げる理由はもう一つある。どんな業務であっても価値を提供する相手がおり、その相手に価値を届ける創意工夫が組織の成長・発展の原動力になるからだ。

 営業担当者にとっては価値を提供する相手はもちろん顧客だが、経理や人事といったいわゆるバックオフィス業務の社員にとっては自社の社員が“顧客”である。営業担当者がストレスなく、効率的に仕事ができる環境を整備すれば、ますます“顧客満足度”は向上し、しかも全社の売上が高まる。またデジタルシフトという側面から考えると、営業担当者が使いやすいデジタルツールを整備すれば、ますます営業担当者は現場で活躍でき、さらなる売上アップが期待できる。

 このようにマーケティングというスキルの本質を捉えていくと、自社のビジネスがBtoCなのかBtoBなのか、あるいは接客業務なのか管理系の業務なのかといった差異は一切関係なくなる。人と接するあらゆる職種にデジタルを知るマーケターとしての素養が必要となるし、マーケターとしての力を磨けば磨くほど、企業がデジタルシフトするスピードはより向上し、消費者に対する理解が進み、業務効率がいっそう改善されるわけだ。

 なお、CMO(最高マーケティング責任者)は、このマーケターが成長した姿であり、役職上一番上にポジショニングされるマーケティングの総責任者である。

 

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顧客ニーズを直接吸い上げ、デジタル技術で価値を生み出す:テクノロジスト >



著者紹介

鉢嶺 登(はちみね・のぼる)

〔株〕オプトホールディング代表取締役社長グループCEO

1967年生まれ。千葉県出身。91年、早稲田大学商学部卒業。森ビル〔株〕にて3年間勤務ののち、26歳で起業。94年に〔株〕オプト(現・〔株〕オプトホールディング)を設立。2004年にJASDAQに上場。13年に東証一部へ市場変更し、現職。経済同友会幹事、新経済連盟理事。現在、インターネット広告代理店の枠にとどまらず、日本企業のデジタルシフトを支援する会社として業務を拡大し、幅広いサービスを提供している。著書に『ビジネスマンは35歳で一度死ぬ』(経済界)、『役員になれる人の「読書力」鍛え方の流儀』(明日香出版社)、『GAFAに克つデジタルシフト』(日本経済新聞出版社)がある。

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