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櫛木理宇先生の小説~光と影、対照的な2つの作風がどちらも魅力的~

2019年11月02日 公開

<連載第3回>THE21編集長の敬愛小説案内~年間100冊小説読む隠れ文藝ファン~

人間は尊い、それとも醜悪?

個人的な好みも大いに関係しているが、「何を読んでもハズレのない作家さん」が、小説好きな方になら何人か思い当たるのではないだろうか。

私にとって、櫛木理宇先生がその一人に入る。

櫛木先生はホラーやミステリーを中心に書かれているが、その作風は、大きく二つに分かれる。
そして、その二つが大変対照的であることが、大きな魅力の一つだ。
同じホラー、ミステリーというジャンルの中でここまで振れ幅のある作風を持つ作家さんは珍しいと思う。

一つは、コメディ要素もある読みやすくライトな作品。
本の装丁も内容に合わせてライトノベル風のイラストが使われている。
人気シリーズの『ホーンテッド・キャンパス』シリーズや、
オカルト青春シリーズの『ドリームダスト・モンスターズ』シリーズ。
弊社(PHP文芸文庫刊)の『アンハッピー・ウエディング』もこちらに入るだろう。

もう一つは、シリアスで暗く、人間の狂気、闇の部分を描く作品。
秘密を抱える女子高生を描く『赤と白』、
稀代の連続殺人鬼の事件を調査するうち、その人生に潜む負の連鎖が明らかになる『死刑にいたる病』、
豪雨による土砂崩れで孤立した村が舞台の『鵜頭川村事件』などだ。

どちらもベースやホラーやミステリーでありながら、あまりにも違う文体、表現で書かれており、
そのどちらも面白い。こんなに幅広い表現ができるなんて……!と感動してしまう。

明るい方を「ライトサイド」、暗い方を「ダークサイド」と仮に呼ばせてもらうとして、
それぞれに一番好きな作品についてここでは簡単に触れさせていただく。

 

ライトサイド Myベスト
『僕とモナミと、春に会う』(幻冬舎文庫)

主人公の高校生の翼は、なぜか毎週水曜日に熱を出すという悩みを抱えた、人と話すのが苦手な高校生。
ある日偶然見つけた奇妙なペットショップで出会った猫を飼うことになり、その店でアルバイトを始める……。

このペットショップというのがちょっと不思議なお店で、そこにいる動物たちも不思議な動物ばかり。
実は猫といっても、翼にだけは美しい女の子に見えている、という設定だ。
この猫・モナミと翼の関係性が、本当の猫と人間の関係のようでもあり、その一方でかけがえのない理解者同士のようでもあり、読んでいてとても温かい気持ちになる。
翼の成長を見ると、人間はいつでもやり直せるし、様々な可能性を持った尊い存在だと思える。

 

ダークサイド Myベスト
『避雷針の夏』 (光文社文庫) 

田舎町・睦間に移住してきた梅宮一家。
しかし、そこは閉鎖的な町で、権力者が我が物顔でのさばり、余所者は徹底的に虐げられていた……。

櫛木先生の中で最も好きな本だ。
先述の『僕とモナミと~』と同じ人が書いているというのが信じられないくらい陰鬱で救いがなく、
あまりにも残酷な表現の描写に目を覆いたくなる。だが、それがいい。
日本の村社会の怖さ、集団心理の異常さのようなものがテーマの根底に流れており、
人間はどこまで醜悪な存在になれるものなのだろうかと身の毛がよだつ。
ただ、現実にも人の所業とは思えない事件はいくつも起きており、それを思えばとてもリアリティのあるストーリーだとも思う。

 


執筆:Nao(THE21編集長)



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