ホーム » THE21 » インタビュー » スカイマークを再生に導いた佐山展生氏のリーダー論

スカイマークを再生に導いた佐山展生氏のリーダー論

2019年11月25日 公開

佐山展生(インテグラル代表取締役パートナー)

「できて当たり前」のことより「誰もやろうとしないこと」に挑戦したい

 

 会社清算の危機から見事に復活したスカイマーク。その立役者が佐山展生氏だ。投資ファンドを運営する佐山氏にとって、事業会社の経営はスカイマークが初めてだったが、なぜ成功できたのだろうか?

 

挑戦するときに儲けを考えてはいけない

 ビジネスで飛行機を利用する際に、多くの人が重視することはなんだろうか。安全は当然のこととして、その次はおそらく、「きちんと時間通りに飛び、目的地に到着してくれること」ではないだろうか。スカイマークは、国内航空会社で、2017年度、18年度と、定時運航率2年連続1位を達成している。定時運航率の向上に伴い、搭乗率も上昇。同社は今、順調に業績を伸ばしている。

 だが、わずか数年前の2014年から15年初頭にかけて、スカイマークは定時運航率の維持どころか、経営状態が大きく悪化。会社存続の危機にあった。資金繰りの目処が立たなくなり、もはや会社を清算せざるを得ないというときに手を差し伸べたのが、投資ファンド・インテグラルだった。

「当時、スカイマークの会長を務めていた井手隆司さんから、『資金の手当てができないので、明日から清算の準備をします』という言葉を電話口で聞いたのは、忘れもしない15年1月23日の夜でした。私が話したのは、『井手さん、それはないでしょう。井手さんはいつも、エアバス330を解約して、ボーイング737だけに絞り込めば、利益が出せるようになるとおっしゃっていたのではないですか。会社存続のために、民事再生の道を選択できないかどうか、これから超特急、全力で検討しましょう』ということでした。

 翌日からインテグラルのスタッフや弁護士、会計士、コンサルタントをスカイマークの本社に派遣し、3日間、缶詰めになって再生可能か検討を重ねました。そうして出した結論は、『90億円まで準備すれば、なんとか乗り切れそうだ』というものでした。私自身も『90億円出せば、儲かるかどうかはわからないが、出したぶんは戻って来るだろう』と判断しました。といっても、90億円の明確な根拠なんてありません。経営が不安定な中で、どれだけお客様が飛行機に乗ってくれるかもわかりませんし……。まったくの直感でした。

 儲けられるとは思っていない案件にあえて投資することにしたのは、そこに社会的意義を感じたからです。まず、同社で働いている約2,000人の社員の雇用を守れます。また、国内の新興航空会社はどれも大手航空会社の傘下に入っていて、独立系はスカイマークだけです。その日本で唯一の独立系航空会社が、消えるかどうかの瀬戸際にある。ところが航空会社もファンドも支援の手を挙げようとしない。だったら自分たちがやろうと決断したんです。

 私は『できて当たり前』のことには、あまり興味が湧きません。誰もやろうとしないことほど、逆に燃えるんです。

 また、何かに挑戦するときには、儲けようなんて考えてはいけません。大切なのは、その『何か』をやり遂げることによって、会社の価値を上げること。お金はその結果として、自然とついてくるものです」

 

飲み会で若手社員の声を直接聞いて取り入れる

 スカイマークは15年1月28日に民事再生法適用を申請。同年9月29日にはインテグラルを筆頭株主とした新体制が整い、佐山氏は同社会長に就任。ここから佐山氏のスカイマーク再建の日々が始まることになる。

「私はこれまでM&Aのアドバイザーや投資ファンドの立場から様々な経営者に接してきましたが、自分自身が事業会社の経営に携わるのは、今回が初めてでした。会長になってからの4年間で学んだことは、それまでのビジネス人生で学んできたこと以上に大きいですね。

 中でも大きな学びは、『経営者はいつも何を考えていて、何をしているのかを、社員に常に伝えようとすることが大事』ということです。特に大きな企業になるほど、現場の社員にとってトップは見えない存在になります。

 私は就任当初から毎週『さやま便り』というメッセージを全社員に発信しています。例えば、『先日、こういうセミナーに行って、スカイマークが2年連続定時運航率日本一を達成したお話をしました』といったことを写真つきで報告しています。社員はそれをスマートフォンなどでいつでも読むことができます。

 毎週発信していると、私がいかにスカイマークのためにエネルギーを注いでいるかを社員に知ってもらうことができます。逆に、私が何も発信しなかったとしたら、きっと社員からは『投資ファンドからやってきたけど、スカイマークのために何かやってくれてるんだろうか』と思われていることでしょう。

『さやま便り』の表紙右上には私のメールアドレスと携帯電話の番号を記載していて、社員には『いつでも連絡してください。飲み会にも誘ってください』と言っています。実際に誘ってもらえることも多く、時間が許す限り参加するようにしています。

 会議の場で私が接することができるのは、一般に管理職以上です。そこでどんな素晴らしいことを言っても、社員の皆さんには伝わりませんし、皆さんの本音の声も伝わってきません。でも飲み会であれば、若手の社員と直接話し、彼らの意見を聞くことができます。良い提案については、すぐに取り入れるようにしています。

 私は、良いリーダーとは、『この人の下でなら、頑張ろう』と部下に思わせられる人だと思っています。自分のことしか考えておらず、色々な要望を出しても聞く耳を持たないリーダーでは、部下の心は離れていきます。だから、若手社員の話が聞ける飲み会は、とても貴重な機会です」

 

次のページ
定時運航率日本一だけをひたすら言い続けた >



著者紹介

佐山展生(さやま・のぶお)

インテグラル〔株〕代表取締役パートナー

1953年、京都市上京区生まれ。洛星高校卒業、京都大学工学部高分子化学科卒業後、エンジニア・研究者として帝人〔株〕に入社。87年に〔株〕三井銀行(現・〔株〕三井住友銀行)に転職し、M&A業務に従事。ニューヨーク駐在中の94年にニューヨーク大学ビジネススクールでMBA(経営学修士号)を取得。99年に東京工業大学大学院で博士号(学術)を取得。98年に日本初の大型独立系投資ファンドであるユニゾン・キャピタル〔株〕を共同創設し、代表取締役に就任。2004年、M&AアドバイザリーのGCA〔株〕を共同創業し、代表取締役に就任。07年、インテグラル〔株〕を共同創業し、代表取締役に就任。15年、スカイマーク㈱に投資し、代表取締役会長に就任。04年、一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授。05年、同教授。現在、一橋大学大学院経営管理研究科および京都大学経営管理大学院客員教授、京都大学大学院総合生存学館(思修館)特任教授。

THE21 購入

2020年1月号

The21 2020年1月号

発売日:2019年12月10日
価格(税込):700円

関連記事

編集部のおすすめ

冨山和彦 40代以上は「何ができるか(スペック)」より「どんな人物か」が評価される

冨山和彦(経営共創基盤〔IGPI〕代表取締役CEO)

「小心者」を強みに変えれば どんな逆境も乗り切れる

湯澤剛(ユサワフードシステム代表取締役)

家業の産廃処理会社を再建した社長が挑む、リサイクルの先の「サーキュラー・エコノミー」

福田隆(トライシクルCEO)
DRAGON JAPAN 龍の日

アクセスランキング

  • Facebookでシェアする
  • Twitterでシェアする
DRAGON JAPAN 龍の日

話題のビジネス・スキルをやさしく解説するとともに、第一線で活躍しているビジネスパーソンの
プロのノウハウを紹介するなど、「いますぐ使える仕事術」が満載されています。