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adidasはラグビーW杯日本大会を盛り上げるため、なぜアートを使ったのか

2019年11月07日 公開

セリーヌ・デルジェネス(adidasグローバルバイスプレジデント)+トーマス・サイラー(adidas Japan副社長)

「オープンソース」で多くの人を巻き込む


adidasグローバルバイスプレジデントのセリーヌ・デルジェネス氏(左)とadidas Japan副社長のトーマス・サイラー氏。中央は「#CreatorsUnite」で制作された作品

 

 日本代表チームがスコットランドをはじめとする強豪を次々と下し、日本中が大いに沸いたラグビーワールドカップ日本大会。しかし、大会が始まる前、日本ではラグビーは人気スポーツとは言いがたい状態だった。そんな中、前々回のニュージーランド大会、前回のイングランド大会と、2大会連続で優勝していたオールブラックス(ニュージーランド代表チーム)とパートナーシップを結んでいるadidasは、日本大会を盛り上げるために、様々な施策を行なっていた。その一端を、グローバル本社バイスプレジデントでラグビーを含む「スペシャリストスポーツ」を担当するセリーヌ・デリジェネス氏と、日本法人副社長のトーマス・サイラー氏に聞いた。

     *     *     *

 ――今回のワールドカップまで、ラグビーは日本ではマイナーと言っていいスポーツでした。世界ではどうなのでしょうか?

セリーヌ グローバルな視点から見ると、ラグビーは世界的なスポーツで、欧州やオセアニア、そして南アフリカにも深く根差しています。米国でもラグビーのビジネスは成長しています。アジアはこれからのマーケットですが、徐々に伸びています。

トーマス 日本でのラグビーのビジネスはまだ規模が小さいのですが、ワールドカップが開催されることで、これまで興味を持っていなかった人たちも団結するだろうと、事前に予想していました。そこで、ワールドカップに向けて、ラグビーのビジネスを成長させるためだけでなく、adidasのブランドが大きなインパクトを持つように、様々なことを行なってきました。その一つが、「#CreatorsUnite」です。

 ――木梨憲武さんをはじめ、イラストや書道など、様々なアートの分野で活躍するクリエイターたちが、オールブラックスをテーマにしたビジュアルを制作するプロジェクトですね。その作品群が渋谷駅や新宿駅の周辺の屋外広告に展示されたり、山手線を車両ジャックしたりしました。

トーマス そうです。ラグビーの選手やファンだけではなく、ラグビーをまったく知らない人たちも含めた幅広い人たちにアプローチすることが目的です。

 ――なぜアートを用いたのでしょうか?

トーマス 私たちは「オープンソース」を戦略の一つにしていて、他の企業やブランド、個人と手を組んで、私たちのブランドの定義に協力していただいています。そこで、パートナーシップを結んでいるオールブラックスのユニフォームのデザインを、山本耀司氏がクリエイティブ・ディレクターを務めるY-3と組んで行ないました。そこからの自然な流れで、日本のアーティストたちと組もうという話になり、日本の要素とオールブラックスのパワーをアートワークによって融合させたのです。

 


山本耀司氏とadidasの協業ブランド「ワイスリー(Y-3)」がデザインを手がけたオールブラックスのユニフォーム

 

 また、私たちはゼロから1を作り出すクリエイティビティも大切にしています。オールブラックスも、先が読めない試合の中で、クリエイティビティを発揮しながら自分たちのプレーを作っています。アートも、クリエイティビティを使って、ゼロから世界を作り上げていきます。その点で、両者は共通しています。

 ――#CreatorsUnite はグローバル本社が企画したのですか? それとも日本法人でしょうか?

セリーヌ ラグビーは日本に深く浸透しているわけではないので、どうすれば消費者を広く巻き込めるのか、両者が一つのチームになって考え、取り組みました。

トーマス メディアプランニングやイベントの企画、開催など、ローカルで行なった部分もあります。ワールドカップでオールブラックスが勝ち進むかどうかなどによって状況が変わるところもあるので、そうした対応もローカルのチームが行ないました。

 ――反響はどうだったのでしょうか?

セリーヌ 目的通り、幅広い人たちを巻き込むことができ、ソーシャルメディアなどでとても良い反響をいただいています。

 ――山本耀司氏率いるY-3がユニフォームをデザインすることについて、オールブラックスの反応はどうでしたか?

セリーヌ 私たちはオールブラックスと20年にもわたるパートナーシップを結んでいます。ですから、何か新しいことをするときは、常に一緒に取り組むことができています。山本耀司氏、そしてY-3と組んで、日本の要素とオールブラックスの要素を融合させたユニフォームを作ろうという話が出たときにも、すごく楽しみにしてくれました。日本とニュージーランドの双方の文化や価値観、レガシーを融合したこのユニフォームは、お互いにとって素晴らしいギフトになったのではないかと思います。

 ――今回のワールドカップで、日本代表チームは初めて8強に入るという活躍をしました。日本市場で、その影響は感じていますか?

トーマス ポジティブな影響を実感しています。オールブラックスの関連商品に限らず、それ以外も含めたラグビー関連商品を求めて、私たちの直営店やオンラインストアに来る人が急激に増えました。

 私個人にも「子供がラグビーの試合を見に行きたいと言っているので、チケットが手に入らないか」という問い合わせが何件もありました。日本で普通に生まれ育つとラグビーよりはサッカーのファンになりやすいだろうと思いますが、これからはその流れが変わるのではないかというような勢いを感じています。

 2016年のリオデジャネイロオリンピックで行なわれた日本対ニュージーランドの7人制ラグビーの試合では、日本が勝っているのですが、当時はラグビーへの関心が低く、知らない人も多いと思います。でも、今回のワールドカップがあったことで、来年のオリンピックで行なわれる7人制ラグビーに対しても関心は高くなるでしょう。

 ――ワールドカップで高まったラグビーの人気を維持するためにadidasとして取り組むことはありますか?

トーマス 私たちは日本のラグビーのトップリーグに参加しているサントリーサンゴリアスや神戸製鋼コベルコスティーラーズ、トヨタ自動車ヴェルブリッツなどのスポンサーもしているので、これからもラグビーに取り組んでいきます。

 ただ、日本ラグビー協会とはパートナーシップを結んでいませんし、一つのブランドでできることは限られますから、私たちにできるのは草の根的な取り組みです。例えば、子供向けに「ヤングアスリートチャレンジ」というイベントを開催しています。ラグビーを含め、様々なスポーツを1日で経験することで、子供たちのスポーツの可能性を広げることを目的にしたものです。過去にはラグビーの大畑大介元選手や五郎丸歩選手も招きました。

 損保会社のAIGジャパン・ホールディングス〔株〕が行なっている、ラグビーを広めるための草の根運動に、商品を提供したりもしています。

 ――日本市場で展開するラグビー関連商品としては、どのようなものに力を入れていくのでしょうか?

トーマス 一番重要なのはシューズです。ラグビーのスパイクで先端を行っているブランドはadidasですから。ワールドカップに出場した選手の足元を見てみても、各国における主力選手の着用率の高さはもちろん、全体でも非常に多くのシェアを獲得しています。

 次いで、ユニフォーム。その次に力を入れているのがオールブラックス関連の商品です。

 ――最後に、ラグビー関連に限らず、日本市場での今後の方針について教えてください。

トーマス まだ2020年までのことしかお話しできませんが、先ほど挙げた「オープンソース」が柱の一つです。また、世界で6都市を「キーシティ」に選んでいて、その一つが東京です。もちろん、東京オリンピックは最も重要なブランドのプラットフォームだと位置づけています。大きな商品を発売したり、大きなキャンペーンを展開したりしていきます。

セリーヌ グローバル本社としても、やはり東京オリンピックは重要ですから、大きなことを仕掛けていきたいと思っています。



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The21 12月号

発売日:2019年11月09日
価格(税込):700円

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