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『アイシールド21』に学ぶ 仕事の「微差」を結果の「大差」に変える方法

2019年11月24日 公開
2019年11月24日 更新

〈連載 THE21的キーブック〉/集英社 原作:稲垣理一郎 漫画:村田雄介

アメリカで最も人気のあるスポーツの一つに、必ず挙げられるのが、アメフト(アメリカンフットボール)。

全米一のプロチームを決める「スーパーボウル」は、アメリカ国民が熱狂するイベントで、その視聴率は50%を超えると言われている、超人気スポーツです。

そのアメフトに打ち込む日本の高校生たちを描いたマンガが、「アイシールド21」。高校の弱小アメフト部に、とんでもなく足の速い、いじめられっ子の主人公が入部し、高校日本一を目指す話です。まさに、これ以上ない王道のスポ根ストーリーです。

このマンガで、影の主人公と言っていいのが、チームの主将、蛭間妖一(ひるまよういち)。金髪で耳にピアスをはめた極悪な人物で、アメフトの要、クオーターバックという司令塔のポジションを担っていました。

非常に頭のいいプレイヤーで、弱小チームが格上のチームに勝つために「奇策・珍策」を仕掛け、誰もやらないことをあえてやることで、相手を翻弄し、勝利をもぎとっていくのです。まさに、策士。

しかし、最大の敵、「神龍寺ナーガ」というチームと対戦したときに、彼は意外な一面を見せました。ゲームの最終盤に奇策も尽き果てて、蛭間が選んだプレイは、自らが走ること。

そして、相手に追いつかれるギリギリで、ゴールラインに走り込み、得点した際に放った言葉が「いくら奇策珍策練ろうがな、結局最後にモノ言うのは基礎トレだ。(中略)0.1秒(タイムを)縮めんのに1年かかったぜ!」というものでした。

飄々として、動じないキャラクターが、自分の足が遅くて伸びしろが少ないことを知りながらも、いつかどこかで役に立つと、0.1秒タイムを縮めるために、何年も走り込みを続けていた。

そのギャップに、当時高校生だった私は、衝撃を受けると同時に「かっこいい……」とうっとりしたものでした。

時が過ぎ、30歳を超えた私が、最近急にこのマンガの話を思い出したのです。それは、同業で、ベストセラーを連発している編集者の話を聞きに行ったときでした。

ここ数年で数十万部を超えるヒット作を連発している凄腕。やっていることもさぞや驚きの手法か!と思いきや、その方が行なっていたのは、

「毎週欠かさず、本の売れ行きのトップ100を見て、売れている理由を予測して、書き込んでいくこと」でした。

また、別のベストセラー編集者が行なってるのが、「毎朝、朝刊の書籍の広告を見て、その本が売れるかどうか予測し、検証する」というものでした。

聞いたときは、普通だな……誰でもできる……と思うのです。しかし、効果がはっきりとはわからないこの分析を何年も何十年も続けている。1回にかかる時間は1時間以下かもしれない。けれど、それが積もり積もって、大きな差になっていることに気づかされたのです。

みなさんの仕事でも当てはまることがあるのではないでしょうか。もちろん一時的に結果を出し、目立つ人は確かにいます。しかし、継続的に結果を出し続けて、実力と言える力を持っている人は、「微差」を「大差」に変えている。

「0.1秒縮めんのに1年かかったぜ…!」。この言葉は、見かけではわからない仕事の深部を教えてくれている気がするのです。

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