THE21 » キャリア » Shopify「規模の大小を問わず、誰でも低コストで開設できるネットショップを提供」

Shopify「規模の大小を問わず、誰でも低コストで開設できるネットショップを提供」

2020年02月07日 公開
2020年05月07日 更新

【経営トップに聞く】マーク・ワング(Shopify 日本カントリー・マネージャー)

 

ECの市場規模世界第3位の日本。その特徴とは?

 

 ――2017年11月に日本法人が設立された際、そのトップにワングさんが就任した理由を教えてください。

ワング 私はカナダ人ですし、日本語もうまくありませんから(※取材は英語の通訳を介して行なった)、おかしいと思われるかもしれませんね(笑)。

 先ほども申し上げたように、Shopifyはプロダクト・ドリブンな企業なので、まずはプロダクトに対する理解が深いこと、そして日本市場について理解していることが、私が日本のカントリー・マネージャーに就任した理由だと思います。

 ただ、Shopifyが私を日本のカントリー・マネージャーに選んだわけではなく、私が自分で自分を選んだんです。Shopifyは起業家精神を大事にする企業で、信念を持ってやりたいことがあれば、それを支援してくれます。

 私のShopifyでの最初の仕事は、グローバルでの成長戦略の策定でした。そのとき、最も優先順位が高いのは日本市場だと考えました。世界第3位の経済大国ですし、ECの市場規模でも第3位。それにダイナミズムが大きい市場で、D2Cビジネスの勢いもあるからです。そういう話をCEOのトビーにしたら、「その通りだね。じゃあ、行ってこい」と言われて、日本法人がスタートしました。

 ――もともとはJPモルガンやシティグループで働いていたということですが、Shopifyに参画したのは、どういう経緯だったのでしょう?

ワング キャリアを始めたのは銀行業界だったのですが、そこでは自分が大きなインパクトを与えられないと感じて、辞めました。シティグループにいるときは、日本を含め、世界中の国をまわりましたね。その後、アジアでの投資事業を行なっていたときに、当時住んでいたジャカルタでShopifyの初期メンバーと会う機会がありました。

 話を聞くと、Shopifyも私と同じく、立ち上げ初期の起業家を支援するソリューションを提供しているということでした。そして、事業の国際化を手伝ってくれないかと言われて、Shopifyに入ることになったのです。

 当時も今も、Shopifyのミッションは「Make Commerce Better for Everyone」です。このミッションのもとで起業家たちを支援する企業に、成長期に入れたのは、ラッキーだったと思います。

 ――日本のカントリー・マネージャーとして、他の国とは違う日本市場の特徴を感じていますか?

ワング まず、ECのエコシステムが非常に複雑です。例えば決済方法にしても、米国だとクレジットカードだけですが、日本だと他にも、代引き、コンビニ払い、キャリア決済などなど、たくさんあります。それらすべてに対応したプロダクトを作らなければなりません。

 もう一つ大きな違いは、店舗を開設している方々が、より良いカスタマーサポートを直接受けたいというニーズを持っていることです。そこで、世界の中で東京にだけ、カスタマーサポートセンターを設けています。

 ネットショップで購入する消費者については、2019年に分析をして、興味深いことがわかりました。例えば、米国の消費者は1回の買い物で平均6~7アイテムを購入しますが、日本では平均2アイテムしか購入しません。まとめて購入したほうが、コストが安く済むのですが。

 また、日本の消費者は同じ店舗から繰り返し購入する傾向が高いこともわかりました。ブランドへのロイヤルティが高く、いったん信頼すれば、高くても購入するのです。

 ――そうした日本の消費者の特徴に合わせたローカライズはしているのでしょうか?

ワング 我々がローカライズをしているのはプラットフォームだけで、それを使って、各店舗がブランドを構築し、お客様とつながっています。

 ――プラットフォームのローカライズというと?

ワング まずは日本語化です。それから、先ほど申し上げた決済方法の多様化など、機能面のローカライズもあります。名前を入力する欄を「名→姓」から「姓→名」に順番を変えるなど、ユーザーエクスペリエンスの面でのローカライズもしています。

 また、日本ではパートナーとエコシステムを構築することが重要ですから、〔株〕NTTドコモや経済産業省、〔株〕博報堂、トランスコスモス〔株〕などとパートナーシップを結んでいます。

 

著者紹介

マーク・ワング(Mark Wang)

Shopify 日本カントリー・マネージャー

1978年、カナダ・オタワ生まれ。2001年、マギル大学卒業。JPモルガンやシティグループでファイナンスやグローバル戦略に関わる。その後、コロンビア大学で経済を学び、10年に卒業。ベトナムやカンボジア、ラオスなど、東南アジアで個人事業主や中小企業のサポートをした後、インドネシアでスタートアップ企業の支援を行なっているタイミングでShopifyに関わり、13年に入社。17年に日本法人Shopify Japan〔株〕を設立し、現職。

THE21 購入

2024年5月号

THE21 2024年5月号

発売日:2024年04月06日
価格(税込):780円

関連記事

編集部のおすすめ

ソニー銀行「データアナリストを育成し、新商品を生み出す」

【経営トップに聞く】住本雄一郎(ソニー銀行社長)

ピップ「現状は9割5分卸売業。メーカー機能拡大への挑戦」

【経営トップに聞く】松浦由治(ピップ社長)

クレストホールディングス「レガシー産業に内側からイノベーションを起こす」

【経営トップに聞く】永井俊輔(クレストホールディングス社長)

<連載>経営トップに聞く

×