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モロッコに咲いた「日本流のおもてなしの花」(モロッコ3)

2020年07月10日 公開
2020年07月10日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(55)石澤義裕(デザイナー)

最後に勝負を分けたのは「おもてなし」の力だった

モロッコ
花屋騒動があった横丁。外出制限がなくなり、人通りが増えてきました。

このモロッコ人オーナーは意外に……と言っては誠に失礼ですが、モロッコ流の「できるビジネスマン」だったのかもしれません。

市場を見出す目があり、その瞼が閉じぬうちに決断をし、まばたきをする間もなく行動し、目ざといマーケティングを行い、いいと思ったものは微に入り細に入り真似る。

ただ、たったひとつだけ、残念なところがありました。

それは「接客」です。

彼のサービスは常に上から目線で、お客さんから徐々に敬遠されるようになったのです。

やがて彼の芳しくない噂が流れだし、いっときはキラ星のごとく隆盛を誇った模倣店は、流星のように消えました。

彼はAさんの店をあらゆる面で真似したのですが、実は直接、Aさんの店から花を買ったことがありませんでした。そのため、「おもてなしの心」だけは学ぶことも、マネすることもできなかったというわけです。

 

ちなみにこのお店を開いたAさんですが、ひとり旅の途中、モロッコをいたく気に入り、長期滞在をするために会社を設立したという「志のない起業」でした。

アラビア語もフランス語も話せず、地元民の彼氏がいるわけでもなく、花を売った経験もない。

しかもモロッコ人ときたら、花といえばバラで、バラといえば花。どちらも同じ単語というくらいに花に興味がない。

そんな「どんなコンサルティングが付いても失敗間違いなし!」だったお店は、来年、創業15周年を迎えます。

店内には、あなたの知らない起業の花が咲いています。

モロッコにお寄りの際は、ぜひ!

モロッコ
アフリカでは先進国のモロッコですが、幹線道路をラクダが通ります。

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