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ポーラ初の女性社長、及川美紀氏が役員に見せつけた「埼玉の底力」

2020年09月10日 公開
2020年09月10日 更新

及川美紀(ポーラ代表取締役社長)

今年、ポーラ初の女性社長となった及川氏は、新卒で同社に入社して間もなく、販売会社に出向している。そこで経験したリーダーへの転機とは?

※本稿は『THE21』2020年9月号より一部抜粋・編集したものです。

 

「私たちをこれ以上がっかりさせないで」で気付いた本当の想い

出向先の埼玉の販売会社では、仕事漬けの毎日を過ごしていました。「自分がいないと、この部署はダメになる」という自負がありました。

ですから、課長への昇進試験を受けることになったときには、当然、受かるものだと思っていました。ところが、結果は不合格。「この程度で、なぜ試験を受けようと思ったのか」と、散々な評価でした。

今から思えばその通りなのですが、そこで私はわかりやすくグレてしまいました。クルマで営業に出るとき、「会議までに戻って来てね」と言われたら、「渋滞に聞いてください」と平気で答えたり……。組織人としてのマインドを失ったんです。

その態度が取引先にも伝わり、商品を販売していただいているショップオーナーの方に、呼び出されました。そこで言われた、「私たちをこれ以上がっかりさせないで」という言葉は、今でもはっきり覚えています。ここまで自分を見てくれている人たちがいることに気づかせてくれました。

そのことを上司に伝えると、上司は「いつ気づくかと待ってたんだ」と言って、「本当は何がしたいんだ」と尋ねました。私の口をついたのは、「組織を変えたい」。聞かれなければ言語化できなかったと思います。上司は、「だと思った」と、その仕事を任せてくれました。

 

埼玉地区を全国2位に引き上げた「決意と志」

それから、仕事への態度はもちろん、読む本などのインプットも変わりました。すると昇進試験にも難なく合格し、その直後、埼玉地区の責任者に昇格。志を買われたのだと思います。

全国に32カ所あった販売拠点中30~31位だった業績も、ベスト10に入るまでに上がりました。ところが、2007年5月の連休前、本社の役員に呼び出されて、「うだつが上がっていないじゃないか」と言われました。当時38歳の私は懸命にやっていると強く主張しました。

けれども、「埼玉という良い地盤を担当し、良いスタッフもいるのに、『埼玉を変える』と言いながらベスト10で満足している」という指摘には、その通りだと思いました。そこで、埼玉の底力を見せようと、与えられたよりも高い目標を自主的に設定。役員には「5日ごとに進捗を報告します」と、頼まれてもいないのに宣言しました。

もちろんスタッフの反発もありました。しかし、緻密に組んだ営業計画を実行し、成果が出ると、自信をつけ、自分たちからアイデアを出すように。私の到達目標が低かったせいで、彼らの能力を発揮させていなかったのだと気づきました。

結果、5月の業績は自主目標も超えました。進捗を報告していた役員からは、5月31日に初めて返信があり、そこには「やっと仕事の仕方を覚えたな」と書いてありました。その後、埼玉の業績は全国2位にまでなりました。

メンバーのやる気と力を引き出すのがリーダーの力。私がリーダーとしての視座を持てたのは、課長昇格試験に落ちてからこのときまでの2年間があったからこそです。

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