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モロッコ流不動産ビジネスの極意とは?(モロッコ5)

2020年09月23日 公開
2020年09月23日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(55)石澤義裕(デザイナー)

モロッコ

EUへの脱出、あえなく失敗

コロナ騒動に巻き込まれ、モロッコに閉じ込められて7ヶ月が経ちました。

第一波を水際で防いだと思われていたモロッコですが、6月下旬から感染者が爆増しています。

あらためて感染者数のグラフを眺めると、春ごろの第一波は単なるさざなみでした。

むしろ今こそが第一波の真っ盛り。天を突き刺す勢いで、棒グラフがいきり立っています。

このパンデミックがEUにバレる前にイタリアへ渡らねばとフェリーを探したら、チケット代は平時の3倍という時価。購入ボタンをクリックできなくてぐずぐずしているうちに、EUから出禁を食らいました。

特別に許可された国以外は、「帰省、仕事、病気、緊急」のみの入国許可。「キャンプ」なんて、アウトドアな文字はありませんでした。

涼しくなるとコロナは活性化するという噂を考えると、今年いっぱいはモロッコじゃないですかね。

となると、「五十而知天命(五十にして天命を知る)」の半ばをすぎたわが家なので、ここら辺が終の住処じゃろうって、お天道様からメッセージをいただいた気がしなくもないです。

幸いモロッコは治安がよく、ヨーロッパの玄関口にしては物価が安いです。

イスラム教なので知る人のみぞ知る程度に酒屋があり、醤油、のり、わさびも手に入ります。

ボクらの住む町には漁港があるので、ウニ、カニ、エビ、カキ、イカ、タコ、タイ、イワシ、マテ貝とよりどりみどりのシーフード。

とても食べる気になれませんが、隠れた名産は色とりどりのウツボ。

そして暑くも寒くもない気候は雨が少なく、徘徊するにはちょうどいい。

 

ただひとつだけ残念なことがありまして、豚肉がないのです。

スーパーマーケットで売られているベーコンは、加工前の端切れを集めたような見かけと味。驚くほどおいしくないです。

これからの人生、生姜焼きやとんかつ、チャーシューがなくて生きていけるのか?って話でして、それは無理。絶対に無理です。

 

テラスつきの素敵な物件が600万円台?

とか言いながら、ついつい地元の不動産サイトを徘徊して、先日、手頃な物件を見つけてしまいました。

町一番のスーパーマーケットから歩いて5分、ビーチまで10分。

71平米で2ベッドルーム。

サイトに載っている写真は2枚。広い部屋と、きれいなテラスの写真。

注目すべきはテラスに階段がついているということ。これは、部屋と同じ広さのルーフバルコニーがあるということです。

つまり、テラス付きの71平米の部屋に、71平米のルーフバルコニー。広い!

お値段は、日本円にしておよそ610万円。

値引きします!とのことなので、不動産屋さんの手数料2.5%に諸経費7.5%を足しても、650万円に収まりそうです。

ということは、もし民泊として貸すと、一泊3,000円で稼働率を50%とするならば、電気代とかを引いても月4万円の利益。

1年間で48万円。

15年とかからず、元がとれそうじゃないですか。

我輩の経済予想では、モロッコの物価はヨーロッパに追いつく勢いで上昇するわけでして、10年で済むかも。

 

悪気なく「インチキ物件」を売る営業マン

なんてことを胸のなかで計算しながら物件を見に行けば、

「お客さま、実に運がいい」

満面の笑顔で迎えてくれた営業マン。

「実はこのアパート、ふたつの物件があります」

「それぞれタイプが違うので、お好きな方をお選びください」

ほっほうそれはそれはと明るい老後を夢見ながら内覧すれば、ふたつの物件とは

1 71平米のテラスなし(2階)

2 45平米のテラス付き+45平米のルーフバルコニー(3階)

なんか変じゃね?

つまり、先ほど見た写真は同じ1つの物件ではなく、2つの別々の物件だったということ。

っていうか、ふたつの物件のいいとこ取りじゃないですか!

それはインチキ!ってことを指摘しても1ミリも真意が伝わらないほど、悪気がないのです、営業マン。

天然。

むしろ、一粒で2度美味しい広告術。私って賢いかもって誇らしげな顔。

邪気のないインチキだから、文句を言ってものれんに腕押し。張り合いがないったらありゃしない。

でも、これできっぱりと移住は諦めました。

 

それなのに、帰り道、運命のいたずらが!

インチキ物件の近所に、豚肉専門店があったのです。

ポークステーキが650gでおよそ860円だから、100gで132円。

ご禁制の品とは思えぬ、庶民に毛が生えたような価格帯で。

移住せよという天啓なのか、お天道様の気まぐれなのか知りませんが、

おじさん、豚肉ひとつください!

 

モロッコ
有名観光地のミュージシャン。半年以上、売り上げがないのではないかと心配です。

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