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クラスター「インターネットにまだ乗っていない体験を、インターネットに乗せる」



2020年11月07日 公開

【経営トップに聞く 第39回】加藤直人(クラスター代表取締役CEO)

クラスター

新型コロナウイルスの流行によって、イベントの開催をリアルな場からバーチャルへと移す流れが広がっている。中でも、世界で最も多くのバーチャルイベントを手がけているのが、2017年にバーチャルイベントプラットフォームとして公開された「cluster」を運営するクラスター〔株〕だ。代表取締役CEO・加藤直人氏に話を聞いた。

「バーチャルイベント屋さん」では終わらない

――コロナ禍の影響は?

【加藤】問い合わせの数も、実際にclusterを使っていただく件数も、飛躍的に伸びています。正式版を公開した2017年には、公開イベントは自社イベントを含めて2桁しか数がなく、昨年は約350件にまで伸びていたのですが、今年は一気に1000件以上になりました。収支も今年に入って黒字になりました。

――どういうイベントが多いのですか?

【加藤】大きなものだと、今年8月に〔株〕ポケモンがバーチャル遊園地「ポケモンバーチャルフェスト」を開催したり、8月と9月に〔株〕横浜DeNAベイスターズとKDDI〔株〕が「バーチャルハマスタ」でオンライン観戦を開催したりしました。もともと多かった音楽ライブも引き続き行なっていますし、eスポーツの観戦や商品発表会、キャンペーンなど、ありとあらゆるイベントに使っていただいています。参加者だけでなく、主催者にもバーチャルイベントの良さを感じていただけています。

――主催者は、どんなところにバーチャルイベントの良さを感じているのでしょう?

【加藤】得られる体験は、動画を観るだけとは違い、VRデバイスやPC、スマホを通じて、バーチャル空間の中を歩き回ったり、他の人とコミュニケーションを取ったりと、フィジカルが伴った、リアルに近いものです。そうでありながら、会場の大きさや法令、物理法則などの制約を受けずに演出ができます。例えば、会場で爆発を起こすことは、リアルでは危なくてできませんが、バーチャルならできるわけです。実際、会場に水が流れ込んできて、参加者たちが沈むという演出をしたことがあります。

 準備や撤収、会場での人員整理などのスタッフが要らないのも、喜んでいただける点です。会場での事故も物理的には起こりません。

――バーチャルイベントのステージは、主催者の依頼を受けて、御社が作る?

【加藤】テンプレートも用意していますが、基本的にはそうです。企画からすべて請け負うのが当社のビジネスモデルなんです。バーチャルイベントなんて誰も知らなかった2015年に創業して、世界で一番多くバーチャルイベントを手がけている会社ですから、そのノウハウを活かしています。

――御社が世界で最も多くのバーチャルイベントを手がけているのは、早くから参入していたから?

【加藤】海外にもバーチャルイベントを手がけている会社はあるのですが、プラットフォームの運営も同時にしている会社は見当たりません。イベント会社か、バーチャルプラットフォームの運営会社か、どちらかなんです。

 また、VRが盛り上がった時期に同業者がいくつか現れたのですが、当時は「バーチャルイベントって何?」と言われる時代で、ビジネスとして成立させるのが難しく、気がつけばどこもやめてしまいました。最近は、ありがたいことに、clusterの取り組みを見てか、またバーチャルイベントに挑戦する会社がポツポツと出てきました。

――バーチャルイベント自体が、日本に多い?

【加藤】そんなことはなくて、企業のカンファレンスなど、海外でも大きなバーチャルイベントは行なわれています。

――海外展開もしている?

【加藤】今のところ、英語や中国語にも対応はしていますが、力は入れていません。今の状態で多言語のユーザーが入り乱れてしまうとユーザー体験が悪くなると考えていて、リージョンを分けるなど、ゾーニングの機能を準備してから本格的な展開に望む予定です。2021年は海外展開が最大のテーマになるだろうと思います。

 日本で事業展開をしている理由としては、まず私が日本人だということがあるのですが、次に、日本のコンテンツがバーチャルに乗せやすいということがあります。リアルなアーティストなどよりも、ポケモンのようなキャラクターのほうが、当然、バーチャルと相性が良い。『ソードアート・オンライン』というラノベ原作の人気アニメのイベントを〔株〕アニプレックスと一緒に開催したこともあるのですが、これは登場人物たちがVRゲームの中に入る話で、やはりバーチャルとの相性が良い。日本には、バーチャルと相性が良いアニメやゲームなどのコンテンツがたくさんあります。

 海外進出も、外国に支社を置いて、当たるか外れるかわからないコンテンツ作りをするよりも、日本に拠点を置いたまま、世界に誇れる日本のコンテンツで進出するのが明らかに効率が良いし、日本人としての王道の戦い方だと考えています。

――御社はclusterを「バーチャルSNS」と呼んでいます。

【加藤】当社は、創業当初から、「バーチャルイベント屋さんで終わらない」と言ってきました。イベントがデジタル化されてインターネットに乗っていく流れは絶対に起こるし、その市場で成功する自信も確信もあるのですが、それだけで終わっては面白くない。最終的にやりたいのは、イベント以外も含めて、インターネットに乗っていない体験をインターネットに乗せることなんです。まずはエンターテイメントのイベントから始めましたが、最終的には、「友達に会う」という感覚までもインターネットに乗せたい。なので、「バーチャルSNS」と呼んでいます。

――バーチャル空間に、もう一つの社会を作るということ?

【加藤】少しだけニュアンスが違っていて、メタバース(リアルに代わる仮想世界)を作りたいということではありません。リアルな体験をインターネットに乗せていき、最終的に、ソーシャルな体験まで含めて、インターネットに乗っていない体験がない生活スタイルを実現したいというのが、やりたいことなんです。

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