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鰹節「フレッシュパック」はどこが"常識破り”の商品だったのか?



2021年02月12日 公開

高津伊兵衛(にんべん代表取締役社長)

 

「かつお節だし」がブレイク。挑戦で可能性に気づいた

誰もしていないことにチャレンジする社風は、今も脈々と受け継がれています。

私自身も、ネット回線がISDNだった頃に、ネット通販を立ち上げさせてもらいました。社長就任後も、新しい取り組みを奨励しています。

特に大きな転機となったのは、2010年に新業態「日本橋だし場」をオープンしたことです。

きっかけは、日本橋の再開発によって、本店がコレド室町に移転したことです。「せっかくだから、何か実験的なことをしよう」と、体験型店舗を作ることにしました。

その体験の一つが、「だしそのものを提供すること」です。

当初は鰹節で引いただしを使った様々なフレーバーのドリンクを提供する予定でしたが、商品開発が上手くいかず、「ならば、だしそのものをドリンクとして出しては」となったのです。味付けはお客様の好みでしていただけます。

値段は無料にする案もありましたが、100円で提供することにしました。

これには、「ただのだしを喜ぶ人がいるのか? しかも、わざわざお金を出して飲む人がいるのか?」と、社内の反対もありました。

正直、私も懐疑的でした。だしはあくまで料理の過程で使う半製品のようなものであり、それ自体に商品価値があるとは思っていなかったからです。

ところが、蓋を開けて驚きました。「ホッとする」「身体に沁みる」「日本人でよかった」「二日酔いに良い」……。お客様から好意的な声が多数寄せられたのです。「だしそのものにも価値があるのだ」と、目から鱗が落ちましたね。

完成形から一つの要素だけを切り離すと、新しい価値が生まれることを、改めて学びました。

それ以来、「日本橋だし場」ブランドを拡大しています。羽田空港や丸ビルなどにも出店し、だしを売りにした和ダイニング「日本橋だし場 はなれ」や惣菜店「一汁旬菜 日本橋だし場」も始めました。

また、18年には、「だしとスパイスの魔法」シリーズを発売しました。「アクアパッツア」や「鶏肉のハーブソテー」など、だしを活用した洋食メニューの専用調味料という新ジャンルです。だしにはまだまだ可能性があると感じています。

お客様のニーズに応える商品を作るには社員たちのアイデアが欠かせませんが、幸い、当社はアイデアには事欠きません。「何でもかんでも新しいことをやりすぎだ」とたしなめるぐらいです(笑)。

 

鰹節という軸からは外れない

可能性が広がっているからこそ、だしの魅力をもっともっと広めていきたい。プライベートで買い物をしたり、食事をしたりするときも、「にんべんの商品が並んでいたらいいだろうな」「この料理に使ってくれたらな」と考えてばかりいます。

実際に採用された場面を想像すると、ワクワクして、自ら営業をすることもあります。「え、社長ですか!?」と、よくビックリされますね(笑)。

このように新たな取り組みを続けてきましたが、一貫しているのは、「鰹節」という軸から外れないこと。

先代からは、「商いに飽きてはいけない」と子供の頃から叩き込まれてきました。自分たちの祖業を見失うことなく、地に足をつけて挑戦する。それが、約320年間続いてきた要因だと考えています。

 



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