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日本で「ワンマン」が否定される意外な理由

2021年03月24日 公開
2023年02月21日 更新

冨山和彦(経営共創基盤[IGPI]グループ会長)

ワンマン経営

日本も戦後は「ワンマン社長の時代」だった

中国に限らず、台湾の鴻海(ホンハイ)、韓国のサムスンも典型的なトップダウン企業だ。さらにいえば、日本でもこの停滞期に成長を続けたソフトバンク、ファーストリテイリング、日本電産やオリックスなどもまた、トップダウン企業だ。

そもそも、日本も戦後の復興期には、松下幸之助や盛田昭夫、本田宗一郎など、数々のトップダウン型リーダーが活躍した。明治に遡れば、三菱を始めとする財閥も、日立や川崎重工も創業世代のワンマン経営で発展した。そうした創業者世代が引退後、サラリーマン型経営、ボトムアップ型経営になってきただけの話である。

日本人の多くやメディアは「トップがワンマンの会社は腐敗する」みたいにいうことが多いが、そういう声に惑わされてはならない。機能しているならワンマンのトップが20年やろうが30年やろうが構わない。

ただ、人間だから命は有限だし、途中でダメになる人も少なくない。だから取締役会が責任をもってトップの任免権の行使と後継者計画を担う仕組みを整えることさえ怠らなければ、くだらない声に耳を貸す必要はない。

その意味で「ヤキが回ったトップのクビを切るガバナンス体制が脆弱だ」という声には、トップ自身も真摯に耳を傾けたほうがいいだろう。リーダーを志す人にはぜひ、強いリーダー、顔の見えるリーダーを志してほしいと思う。

 

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