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コロナ禍での株価上昇は「バブル」か? 今は株の「買い時」か「売り時」か?

2021年03月18日 公開
2023年02月21日 更新

奥野一成(NVIC常務兼CIO)

奥野一成

コロナ禍によって実体経済は大きな打撃を受けている。2020年の世界経済の成長率は、リーマンショック直後の2009年以来初めてマイナスに転じ、しかも、2009年よりも大きなマイナスとなった。

しかし、日経平均も、ダウ平均も、S&P500も、株価は2020年3月に一時的に大幅に下落しただけで、大きく伸び続けている。喜ぶ人もいる一方で、「バブルではないか?」と心配な人もいるだろう。

長期厳選投資のアクティブファンドである「おおぶね」ファンドシリーズを展開するNVIC(農林中金バリューインベストメンツ〔株〕)で常務取締役兼CIO(最高投資責任者)を務め、今年3月に『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)を上梓した奥野一成氏に見解を聞いた。

※本稿は2021年3月時点の情報に基づき、投資に対する考え方を示したものであり、個別の金融商品を推奨するものではありません。金融商品の価値は状況によって変動しますので、購入の可否を含む投資の判断はご自身の責任で行うようお願いいたします。

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コロナ禍によってダメージを受けている経済を救うため、世界各国の中央銀行が大規模な金融緩和を行なうとともに、各国政府が給付金の支給をしています。

リーマンショック後にも金融緩和が行なわれましたが、今回が当時と違うのは、給付金という形で個人に直接お金が回ってきたことです。金融緩和では、金融機関にはお金が回りますが、個人には直接は回ってきません。

そして、お金を手にした個人が、その一部を、ギャンブルとして株式投資に使っているケースもあると思います。

ニューヨーク証券取引所に上場しているコンピュータゲーム小売業者・ゲームストップの株価が、オンライン掲示板に集まった個人投資家たちが大量に買ったことによって一時急騰しましたが、その背景にも、個人が株式投資に使うお金が増えたことがあるのではないでしょうか。

ギャンブル目的のお金が市場に入ってきているとすれば、今の相場はバブルなのかもしれません。

しかし、もしバブルだとしても、だからと言って「今は株の買い時ではない」「早く売るべきだ」ということにはなりません。

断っておきますが、短期間での株の売買を繰り返して利益を得ようとする、ギャンブル目的の株式投資をしたいのなら、それは、いつであってもやめるべきです。そんなことをするのなら、きちんと仕事をして稼いだほうがいい。

一方、資産形成のために長期投資をしたいのであれば、本当に素晴らしい企業を選んで投資すればいい。本当に素晴らしい企業とは、あとでその3要件を述べたいと思いますが、永続的に利益を出し続ける成長企業であって、世界標準で見て、その収益性、成長性の堅確性が高いと考えられる企業を指します。

そういった企業は世界的に見てもそれほどたくさんあるとは思えませんし、しっかりと厳選しなければなりませんが、そんな企業の株を持てば、その企業が働いて稼ぎ出した利益の一部を、株の持ち分に応じて得られるわけです。これこそが、「他人に働いてもらう」ということであり、自分一人の限られた時間を使って働くだけでは稼げない利益を得る方法です。

そのような本当に素晴らしい企業への長期投資を始めるのに、今の株価は関係ありません。いったん下落したとしても、長期的にはもとの株価以上に戻してくる可能性が高いからです。

逆に言えば、そこそこの企業を選んでしまうとバブル崩壊に捕まってしまい、長期投資という名の単なる「塩漬け」になってしまうでしょう。

このような「そこそこの」企業を選んで投資するのであれば、売買タイミングがすべてであり、株価や相場を気にする必要があるでしょう。

しかし、本当に素晴らしい企業に対して株式投資をすることで、そのような企業のオーナーになるというスタイルの長期投資にとって、最も重要なことは、「売買タイミングを選ぶ」ことではなく、「どの企業を選ぶのか」という、より本質的かつ主体的な選択なのです。

「売買タイミング」を選ばない真の長期投資をするうえでは買い方も重要です。具体的には、貯金(ストック)からではなく、フローとして入ってくる収入から一定額を株式投資に充てて、毎月積み立てていくのがいいでしょう。

そうすると、もし株価が下がった場合は買える株数が多くなり、平均取得単価が下がる。いわゆる「ドルコスト平均法」です。

毎月、毎週、毎日、積立で少額ずつ買うようにすると、「いつ買うのか、いつ売るのか」などというタイミングなど気にならなくなります。相場の上下に一喜一憂するという無駄なことから解放されるのです。そして、「何を買うべきか」に、より集中することができるようになります。

では、永続的に利益を出し続ける、本当に素晴らしい企業は、どうすれば見極められるのか。

私は、ファンドマネージャーとして、日々、そうした企業を探し続けています。その際のポイントは、「高い付加価値」「高い参入障壁」「長期潮流」の3つです。

本当に世の中にとって必要で(高い付加価値)、今さら向こうを張って勝負しようとは誰も思わないほどに圧倒的に強く(高い参入障壁)、そのうえで、不可逆的であると言い切れる長期潮流に乗っている事業を行なっている企業に、私たちは投資しています。

皆さんも、投資先を考えるときには、その企業の事業が「高い付加価値」「高い参入障壁」「長期潮流」の3つを満たしているか、仮説を立てて検討してください。投資は、身体を動かして汗をかく必要はありませんが、頭を働かせて脳みそに汗をかかなければ成功しません。ラクをして儲ける方法などないのです。

PERやPBR、売上、利益率などの数字は、過去を語るものであって、未来を教えてはくれません。チャート分析は、かつて私も債券ディーラーだった頃にずいぶん勉強し、実践しましたが、星占いのようなものでした。

配当利回りで投資先を決める人もいますが、配当の原資は利益ですから、利益を出し続ける企業でなければ高配当を維持できません。また、配当を増やすと、将来の成長のための投資に回す原資が減ることは、理解しておくべきでしょう。

また、個別株投資よりも、インデックスファンドへの投資を勧める人も多いのですが、本当に良い企業もそうでない企業も一緒にしたファンドで、本当に利益が出るでしょうか。

現に、日経平均は、上昇しているとはいえ、1989年12月の史上最高値3万8915円を上回ってはいません(2021年3月8日現在)。30年も高値を更新できないのは、インデックスを構成している企業の総体としての利益が株式投資の基準を満たしてこなかったからです。要は、インデックスの中身の企業の利益の問題なのです。

その点、インデックスでも、S&P500は時価総額などに代表される基準により500銘柄選んで構成しているので、素晴らしく強い企業が多く含まれています。逆の言い方をすれば、時価総額を増大できないような企業はインデックスから排除されるような仕組みになっています。ですから、S&P500に連動するインデックスファンドなら、長期的に価値が上がっていく可能性が高いと言えると思います。

ちなみに、2019年12月のS&P500は3200前後でした。現在は3800前後ですから、もし今から15%下落することがあったとしても、2019年12月と同水準に戻るだけです。

つまり、投資をするときに大切な視点は、それが価値を生むものなのかどうかで、これはインデックス投資も同様です。大切なのは、インデックスを構成している中身なのです。

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