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中小企業のECサイトを構築。営業職から「フリーランスのエンジニア」になるという生き方

2021年03月29日 公開
2023年02月21日 更新

福水正太(フリーランスエンジニア)

福水正太

「フリーランスのエンジニア」と聞くと、並外れたIT能力を持ち、東京で都会的な生活をしている人をイメージするかもしれない。しかし、必ずしもそんなことはない。もとはエンジニアとは縁遠い営業職で、福岡市にオフィスを構えるフリーランスのエンジニア、福水正太氏に、その転身について聞いた。

 

“月35万”のアフィリエイト売上がゼロになり

福水氏の仕事は、クライアント企業のECサイトを、Shopifyを使って構築したり、カスタマイズしたりすること。クライアントには飲食業やアパレル業の中小企業が多く、半数以上が東京圏以外の企業だという。

「自社でECサイトを運営したいと思っても、ITリテラシーが高い企業でないと、内製することは難しい。かといって、業者に発注すると高額の費用がかかってしまいます。

そこで、ECサイトを手軽に作れるサービスを調べて、Shopifyを知るケースが多いようです。そして、ランサーズなどで『Shopifyエキスパート』の認定を受けている私のことを見つけていただき、お声がけいただいています。

私が『Shopifyエキスパート』の認定を受けたのは2021年1月。私が調べたところでは、その時点で『Shopifyエキスパート』の認定を受けているフリーランスは10人ほどではなかったかと思います」(福水氏)

福水氏がShopifyの仕事を受け始めたのは2020年の7~8月頃。それから2021年2月までの売上は累計400万円を超えているそうだ。しかし、もともとエンジニアだったわけではなく、家電量販店の営業職として働いていた。

「私は独立志向が強く、経営に役立つだろうと考え、大学は経済学部に入りました。2年生のときに簿記2級に合格し、大学の図書館で簿記講座を開いたりしていたのですが、卒業までにビジネスを作ることができず、アルバイトで働いていた家電量販店に入社して、福岡市で営業職として働いていたんです。

けれども、独立したいという気持ちがやはり強く、副業として行なっていた、WordPressで作ったウェブサイトでのアフィリエイトの売上が月35万円を数カ月連続で超えたのを機に、独立に踏み切りました。2019年5月のことです」(福水氏)

ところが、半年ほどが過ぎた2020年1月、アフィリエイトの売上がほぼゼロに落ちてしまった。Googleの検索アルゴリズムの大きなアップデートが行なわれたためだ。

「そこで、WordPressでウェブ制作をする仕事に切り替えました。実績を積んで信用を得れば集客ができるようになるビジネスに転換することにしたんです。WordPressの技術を独学でさらに磨き、ランサーズなど、仕事をしたい企業と個人のマッチングをする複数のサイトに登録しました」(福水氏)

はじめはウェブ制作の実績がなかったので、安さをアピールして仕事を受注していた。20件ほど仕事をするうちに、技術も向上し、クライアントとのやり取りにも慣れたという。そんななか、知人から「ECサイトを作れないか」という相談を持ちかけられた。

「2020年の2~3月頃です。特に決済まわりのことがわからなかったので、ECサイトの構築はできないと思っていたのですが、改めて調べてみると、Shopifyを使えばできることに気がつきました。使ってみると、管理画面も使いやすく、Shopifyは伸びると確信しました」(福水氏)

 

Shopifyでのサイト構築業務は“初心者”でも始めやすい

そこで福水氏は、2020年5月から、Shopify Partner Boot Campという、Shopifyが行なっている週1回2時間、1カ月半ほどのオンラインセミナーに参加し、基礎的な技術を身につけた。その後も、架空の饅頭店のECサイトを自分で作ってみたりして技術を磨き、サイトでShopifyの案件への応募を始めることにした。

「当初はWordPressとShopifyの仕事を両方とも受けていて、営業資料も2種類使っていました。WordPressでのウェブ制作の仕事を始めたときと同じく、実績がない、まだ何者でもない状態では、安さをアピールするしかありません。クライアントへの返信の速さも重要です」(福水氏)

初めてゼロからShopifyでECサイトを構築する案件を受注したのは2020年8月。海外のアパレルブランドを国内で販売する代理店の仕事だった。WordPressでのウェブサイト構築に比べて、ShopifyでのECサイト構築の仕事は、料金の下限が高いと感じるそうだ。

「単価を上げるために必要なのはブランディングです。実績を積むことでクライアントから高評価を受けると共に、第3者からの評価も得て、それをアピールすることが重要です。

私が『Shopifyエキスパート』に申請したのも、ブランディングの一環です。認定を受けてからは、サイト上のプロフィールも一新してShopifyだけに特化し、企業にアピールするようにしました」(福水氏)

もちろん、ブランディングは、技術があってこそのものだ。もともと営業職だった福水氏だが、技術やECサイト構築に必要なデザインセンスは、問題にならなかったのだろうか。

「技術については、クライアントによってやりたいことが違うので、今も毎回のように調べながら仕事をしています。独学もしていますし、ランサーズ社が提供しているMENTAというサービスを活用して、メンターに教えてもらってもいます。デザインセンスについては、必要ないですね。

Shopifyには様々なテンプレートが用意されていますし、必要があればデザイナーに発注すればいいですから。フリーランスとして働くための、自分を律する力は必要ですが、特にITやデザインに詳しくなければ始められない仕事ではありません」(福水氏)

 

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