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芸能人の「東京一極集中」は過去の話? 急変したエンタメ事情



2021年07月13日 公開

中川悠介(アソビシステム社長)

中川悠介

コロナ禍で最も大きなダメージを受けている業界の一つがエンターテインメント業界だ。一方で、技術の進化で、新たなエンターテインメントも生まれている。原宿から世界へカルチャーを発信し続けるアソビシステムの創業社長・中川悠介氏にエンターテインメントの未来を聞く。(取材・構成:林加愛)

※本稿は、THE21編集部 編『2030年 ビジネスの未来地図』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

 

東京じゃなきゃ芸能活動ができない時代は終わった

コロナ禍によって、リアルなイベントやコンサート、舞台などができなくなり、エンターテインメント業界は大きなダメージを受けています。

しかし、同時に、この逆境は私たちに新しい視点をもたらしました。それにより、アフターコロナでは、以前とは違う形のエンターテインメントを提供できる可能性があります。

また、これまで業界に根づいていた様々な慣習にも、より良い方向に改革できるものがあると感じています。

例えば、東京一極集中からの脱却です。

東京一極集中は日本社会全体に共通する現象ですが、エンターテインメント業界でも「成功したいなら東京に出たほうがいい」「東京に出なければ芸能活動はできない」という考え方が一般的でした。

地方出身のタレント志望者が、10代で親元を離れて東京に出てきて、事務所の寮などで暮らすことも少なくありません。

しかし、これは果たして良いことなのだろうかと、私は常々感じていました。

この業界は、頑張れば成功できるという世界ではありません。

東京に出て来たい人は出て来ればいいのですが、地方で芸能活動をしたい人には、その選択肢を提供することが、プロデュース業に携わる人々には必要だと思います。

オンラインやバーチャルの環境が普及したことで、それは十分に実現可能となってきました。

実際、コロナ禍以降、東京を離れる芸能人も増えています。地方に住んでSNSでの発信などをして、テレビなどの仕事があるときのみ上京する、というスタイルです。

海外の映画スターにも、普段は国内外の好きなところに住み、撮影期間だけハリウッドに滞在する人が多数います。これからは日本でも、そうした働き方を浸透させたいと思っています。

そのために、当社は、エリア戦略を構築しつつあります。既にある大阪と福岡の拠点の他、ゆくゆくは沖縄にも拠点を置き、発信地を増やしていく予定です。

その各所でスタッフの採用や育成も行ない、どこでも芸能活動ができる環境を整えていきたいと考えています。

 

リアルにバーチャルが加わってチャンスが広がる

オンラインやバーチャルの環境が普及したことで、地方にいながらにして、東京の魅力を楽しめるようにもなりました。

例えば、2020年から提供されている配信プラットフォーム「バーチャル渋谷」は、スマホやパソコン、VRデバイスを通して、どこにいても渋谷の街を楽しみ、催しに参加したり買い物をしたりできるサービスです。

2021年5月には、バーチャル渋谷が拡張して「バーチャル原宿」もできました。当社も参画し、きゃりーぱみゅぱみゅがスペシャルサポーターを務めています。

このように、エンターテインメントは「距離」という制約から解放されつつあります。

アフターコロナでは、それを最大限に活かし、リアルとバーチャルの双方を活用するハイブリッド型サービスが発展するでしょう。

かつて、リアルとバーチャルは競合すると考えられがちでした。バーチャルによってリアルが駆逐される不安を感じる人も少なくありませんでした。

しかし、両者のよさを掛け合わせることで、相乗効果的に価値を高めることができます。

例えば、収容人数の少ないライブハウスでしかライブを行なえなかったアーティストでも、会場の観客に加えて、オンライン配信で自宅などにいる観客にもパフォーマンスを届けることができるようになりました。

イベントの内容によっては、チャットなどで、オンライン配信の観客との双方向のコミュニケーションも可能です。

その面白さに、ユーザーも気づき始めています。移動時間や空間的な拘束がなく、発信者と物理的な距離はあっても心理的な距離は近い。そして何より、気軽にアクセスできる。この魅力は、エンターテインメントを楽しむ人たちの裾野を大きく広げるでしょう。

その結果、リアルの価値が見直されることにもなります。

アーティストやタレントと、同一のリアルな空間に身を置くことには、バーチャルでは得られない、具体的に言い表しようのない価値があると、多くの人たちが感じるようになります。

ビジネスパーソンの方々も、テレワーク期間中にたまの出勤で仲間と会うと、そう感じられるのではないでしょうか。オンラインだと用件しか話せなくても、リアルなら雑談もできます。それは決して無駄なことではなく、重要なコミュニケーションだったと気づいたはずです。

好きなアーティストのライブやタレントのイベントにリアルで参加するとなると、その喜びはさらに大きくなるでしょう。

コロナ禍による制約がなくなったあと、リアルの付加価値を際立たせたエンターテインメントを提供するために、準備できることは多くあると思います。

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