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優秀で能力が高いはずの日本人ビジネスパーソンに「決定的に欠けているもの」

2021年07月16日 公開
2023年02月21日 更新

梅澤高明(A.T.カーニー日本法人会長/CIC Japan会長)

梅澤高明

世界的な経営コンサルティング会社の日本法人会長であり、クールジャパンやインバウンド観光などの分野でも政府委員会の委員などとして活躍する梅澤高明氏。梅澤氏が2030年に向けて成長すると見ているのは、どんな産業なのか?(取材構成:塚田有香)

※本稿は、『THE21』編集部編『2030年 ビジネスの未来地図』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

 

「二足のわらじ」を履くことがキャリアのシフトをスムーズにする

2030年に向けた変化で私が注目しているのは、「人生の長期化」です。

人生100年時代が到来し、人間の健康寿命が延びて、人々は現在より長く働くことになります。これまで職業人生は40~45年ほどでしたが、それが60年や70年もの長さになるのです。

一方で、技術の進化が加速して産業の盛衰が激しくなり、AI(人工知能)の進化によってホワイトカラーの仕事の多くがAIへ代替されていきます。

そうなると、もはや一つの会社や仕事にしがみついても、人生は成立しません。つまり、2度、3度とキャリアチェンジするのが当たり前になる。

私は以前から「人生三毛作」を提案してきましたが、それが働く人にとってのスタンダードになる時代がやってくるということです。

「人生三毛作」を実現するには、「二足のわらじ」を履く期間が必要です。

二つ目や三つ目のキャリアにシフトするとき、いきなり今の会社や仕事を辞めて、まったく新しい職業へ飛び移るのは、リスクが高すぎます。よって、現在の仕事をしながら新しいことにトライして、少しずつキャリアの重心を移していくのが現実的です。

その点で、最近の副業解禁の流れは歓迎すべき変化だと受け止めています。

会社が二足のわらじを履くことを認めれば、個人が新たなチャレンジをすることへのハードルが低くなります。

中には自力で人生二毛作や三毛作を実現できる人もいると思いますが、日本では長きにわたって「一つの会社で定年まで勤め上げる」というキャリア観が一般的だったため、ほとんどの人は何らかの後押しがなければマインドチェンジが難しい。

さらには、どのように新しい機会を見つければいいのか、どうやって新しいスキルを身につければいいのかもわからない人がまだまだ多いはずです。

副業の制度を活用すれば、これまでとは違う業務を経験しながらスキルを磨くこともできるし、新たな人脈を築くこともできます。これらのスキルや人脈をベースにすれば、次のキャリアへの移行がスムーズになります。

人生二毛作・三毛作への準備期間を作れるのが、副業の大きなメリットと言えます。

私自身、ここ数年は三つの仕事に同時並行で取り組んでいて、いわば「三足のわらじ」を履いた状態です。

1足目は、A.T.カーニー日本法人会長およびコンサルタントとしての仕事。

2足目は、2020年にオープンした国内最大級のイノベーションコミュニティ「CIC Tokyo」の運営。

3足目は、ナイトタイムエコノミー推進協議会の活動。これは日本各地の観光コンテンツ作りを支援する組織で、過去2年間で50件ほどのプロジェクトを手がけました。

こうして複数の仕事に取り組むことにより、自分の可能性が広がるのはもちろん、精神的な健康を保つうえでも効果があると感じています。一つの会社に依存していないので、「もし会社から『君はもういらない』と言われたらどうしよう」と不安に思わずに済むわけです。

これからは、社会全体で、働く人たちの「人生三毛作」や「二足のわらじ」を後押ししていくことが求められます。新しいチャレンジをする人が増えれば、日本の「変化する力」が高まります。

時代の流れに応じた産業構造の革新も起こりやすくなり、より将来性のある産業へ人材の移動が起こるでしょう。それが社会のフレキシビリティやレジリエンスを高め、ひいては日本全体が成長のポテンシャルを高めることにつながります。

また個人にとっては、様々な仕事や組織を経験することで、自己実現の機会が増えます。本当に自分がやりたいことや向いていることに出会えるチャンスも多くなるでしょう。人生の選択肢を増やせば、より幸せな人生を送ることができるはずです。

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