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「価値観やトレンドを企業が押し付ける時代は終わった」グラニフCEO 村田昭彦

2021年11月07日 公開

【経営トップに聞く 第55回】村田昭彦(グラニフCEO)

グラニフ

今年、設立から20周年を迎えた〔株〕グラニフが、リブランディングを行なった。これまで、ロゴにも「Design Tshirts Store graniph」と掲げ、デザインTシャツを中心としたアパレルを扱ってきたが、5年後に売上の50%を非アパレルにすると発表。ロゴも変更した。昨年9月に代表取締役CEOに就任した村田昭彦氏に、その意図を聞いた。

「グラフィック+ライフスタイル」の会社へ

――まず、CEOに就任した経緯を教えてください。

【村田】(2020年1月にグラニフを買収したPE〈プライベート・エクイティ〉ファンドの)〔株〕丸の内キャピタルからお声がけいただきました。PEファンドと一緒に企業価値を上げるというのは新しい経験で、とてもやりがいがあると感じました。

 また、決められた期限内に決められた目標を達成するという明確なミッションがあり、自分に合っているとも感じました。

――5年後に売上を現在の約3倍の300億円にし、その50%を、現在はほぼゼロの非アパレルにすると発表されました。なぜ、非アパレルに進出するのでしょうか?

【村田】国内のアパレル市場は約9兆円もあって、とても大きい。けれども、参入障壁が低いために約2万社もの企業がひしめいています。しかも、差別化が難しいので、収益性が低い。〔株〕ファーストリテイリングの独り勝ちが続いていると言っていいでしょう。

 ですから、私はかねてから、アパレル市場で戦うのはクレイジーだと思っていました。

 ロゴも、以前のものには「Design Tshirts」と書かれていたので、変えました。「ロゴを見たことはあるけれど、どういうブランドかは知らない」という人が多かったという理由もあります。

――非アパレルでは、どのような商品展開をするのですか?

【村田】外部のリサーチ会社にネット・プロモーター・スコアという顧客ロイヤルティの調査をしてもらったところ、当社は+22.7ポイントという結果でした。普通はマイナスになる指標ですから、これは非常に高い。他の有名なアパレルブランドに比べても圧倒的です。

 それはなぜかと言えば、商品のグラフィックがユニークで、デザイン性が高く、バリエーションが豊富だからです。お客様は、当社のTシャツを求めているわけではなくて、グラフィックを通じて自己表現をし、高揚感を得ることを求めているのです。

 ですから、グラフィックを生活雑貨やスニーカーなどのライフスタイル商品全般に乗せることで、アパレル市場から脱却し、「グラフィックライフ」という新しい市場を作って独占できると考えています。「グラフィック+ライフスタイル」という事業は、他に誰もやっていないと思います。

――アパレルと生活雑貨の両方を手がけている企業はあります。

【村田】確かに、その企業のテイストでアパレルも生活雑貨も統一して展開している企業はあります。

 けれども、当社の場合は、ファインアートからマンガ、アニメまで、様々なコンテンツを幅広く使っていて、テイストを統一していません。それぞれのコンテンツが好きな方に、それぞれの商品を購入していただきたい。ターゲットを絞り込まない、ノーターゲットです。

 ファッションの世界には、自社の価値観やトレンドをお客様に押し付ける企業が多いのですが、当社はそうではありません。世の中には多様な価値観があるので、お客様に自分の価値観に合う商品を選択していただけるようにしています。

 こう言うと、「コンテンツを借りてきて商品に乗せるだけなら誰でもできる」と思われるかもしれませんが、そう簡単なことではありません。レイアウトやディテールなど、細かいこだわりやアイデアの積み重ねが重要です。20年間、それをやり続けてきた当社には、一日の長があると思います。

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