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「EVの大量普及は電池の再利用なくしてあり得ない」フォーアールエナジー社長 牧野英治

2021年12月07日 公開

【経営トップに聞く 第56回】牧野英治(フォーアールエナジー社長)

フォーアールエナジー

地球温暖化対策のため、世界中で脱炭素への取り組みが加速している。自動車のEV(電気自動車)化は、その中でも特に注目されているテーマだ。そして、EVの普及のためには、車載用電池の再利用が欠かせないと、フォーアールエナジー〔株〕の代表取締役社長・牧野英治氏は話す。

 

新品の電池を作るには資源もいるし、CO2も排出する

――自動車メーカー各社が次々と電動化の方針を示しています。

【牧野】トヨタ自動車〔株〕は「2050年カーボンニュートラルに向けたチェレンジをする」という言い方ですが、ホンダ(本田技研工業〔株〕)は2040年までに新車販売をすべてEVかFCV(燃料電池自動車)に切り替えると発表していますし、日産自動車〔株〕も2030年代の早いタイミングで投入する新型車をすべて電動車にすると言っています。

GMは2035年までに販売する新車をゼロエミッションにするとしています。GMはトラックも販売していますが、それも含めてです。フォードも2030年に欧州で販売する新車をすべてEVにするとしていますし、フォルクスワーゲンも、2030年に販売する新車のうち、EVの割合を欧州で7割、米国と中国では5割に引き上げるとしています。ダイムラーも2030年に新車の50%をEVとPHV(プラグインハイブリッド車)にするとしています。

――地球温暖化対策を急いでいるわけですね。

【牧野】IEA(国際エネルギー機関)によると、2050年にカーボンニュートラルを実現するためには、現在年間3.29Gt(ギガトン)出ている小型車からのCO2を、2050年には97%減の0.0975Gtにしなければなりません。これは既販車も含めた数字ですから、新車は2030年代のかなり早い段階でEVやFCVなどゼロエミッション車にすべて切り替える必要があります。

――実現するには課題も多そうです。

【牧野】昨年10月に当時の菅義偉首相が2050年のカーボンニュートラルを宣言したことを受けて、同12月、JAMA(日本自動車工業会)がEVの普及のうえでの課題を4点にまとめて発表しました。

1つ目は、重量が重い、耐久時間が短い、航続距離が短いといった、電池自体の技術的なイノベーションの課題。2つ目は、充電時間が長くかかるという、規格や技術の問題です。

そして、3つ目に資源の問題を挙げています。小型車は世界で年間8000万台ほど販売されています。それがすべて電動化されると、今のままでは、コバルトやニッケルといった電池に使われるレアメタルが、間違いなく足りなくなります。

中国は、自国でも様々な資源を産出していますが、世界中の資源を押さえ始めています。また、テスラなど、個社で資源を押さえているところもあります。

課題の4つ目として挙げられているのは、電池のリユース・リサイクルに関する課題です。電動車の大量普及に備えた、官民が連携した社会システムを構築する必要性を指摘しています。

――御社は車載用電池の再利用を手がけています。資源の面でも、社会に必要な事業だということですね。

【牧野】電動車で使い終わった電池を処分しようとすると、費用がかかります。しかし、再利用すれば、価値を生み出します。

当社の役割の1つ目は、電動車の電池を再利用することで、電動車の残価を上げ、電動車の販売拡大に貢献することです。

2つ目は、再エネ(再生可能エネルギー)の普及に貢献することです。

今年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画でも、2050年のカーボンニュートラルに向けて、再エネの比重を従来の目標よりもさらに高めていくことが示されました。

しかし、再エネには供給が不安定だという課題があります。発電した電気をいったん電池に蓄えれば安定して供給できますが、新品の電池は価格が高い。そこで、使い終わった車載用電池を再利用することで、手頃な価格の電池を提供していきたい、ということです。

再エネの比重が高まるということは、電動車が使う電気がクリーンになるということですから、やはり電動車の価値が高まります。

そして3つ目の役割として、先ほど申し上げた資源の問題に貢献することがあります。

さらに4つ目として、電池を作る際に出るCO2を減らす役割もあります。

IEAによると、電池を1kWh作ると100kgのCO2が排出されます。ということは、例えば、世界で一番売れているEVが搭載している54~82kWhの電池を作るには5.4~8.2tのCO2が出るということです。これは、日本人がコロナ禍前に1年間で排出していたCO2の2.8~4.3人分に当たります。

電池を再利用して、新品の電池を作らなければ、それだけCO2の排出量を削減できるわけです。

――車載用電池の再利用というのは、具体的には、どのようなことをしているのですか?

【牧野】現在、主に扱っているのは「リーフ」で使い終わった電池です。

「リーフ」の電池は48個のモジュールでできているのですが、その1個ずつの性能を把握し、3段階に分け、所定期間後(例えば10年後)にどれだけの容量が残っているか、どれだけのパワーが出せるのかなどを判断して、小型EVや無人搬送機(AGV)などの移動体、また、大型の蓄電設備など、それぞれに適した用途の蓄電池に変えています。

同じ性能が残っているモジュールを組み合わせて1つの製品を作ることがポイントです。

LEAF
日産「リーフ」に使われている電池のモジュール

 

この劣化のシミュレーションをするツールを作り上げたことが、当社独自の強みの1つです。

「リーフ」は50万台強販売されていますが、そのすべてから、走っているときの状況や周囲の状況のデータを取っています。そのビッグデータと、当社が正確に測定したリーフ数千台分の電池のデータを照らし合わせることで、劣化のシミュレーションができるようになりました。

急速充電を頻繁にするとどういう影響があるか、自宅など外部へ給電するVtoXの機能を毎日使うとどういう影響があるか、といったことを、すべて明確にしたのです。

当社の製品は、再利用なので価格面での競争優位性もありますし、循環経済という社会にも貢献していますが、最もこだわっているのは安全性です。蓄電池は社会インフラの非常に重要なピースですから。

安全性のため、まず、発火するような不具合を起こしたことがなく、信頼性が高い「リーフ」の電池を使っています。

また、UL1974という米国の厳しい電池再利用に関する安全規格の認証を取得しました。今のところ、認証を得ているのは世界中で当社だけです。

さらに、「リーフ」に採用されている、バックアップシステムを2重にした制御システムを採用しています。そのうえ、万が一のことがあっても、筐体の中が酸欠状態になって火が出ない防爆設計にしています。その分、コストもかかるのですが、当社のこだわりです。

製品の例を挙げると、今年2月9日にJR東日本(東日本旅客鉄道〔株〕)が社長の定例記者会見で発表した、踏切の保安装置電源用バッテリーがあります。

JR東日本には約6000カ所の遮断機付き踏切があり、そこに鉛の蓄電池を置いて、停電時でも踏切の上げ下げができるようにしています。その蓄電池を、「リーフ」の電池9モジュールを再利用したものに替えることで、充電時間を3分の1にし、コストを最大4割下げられます。

鉛の蓄電池は液量などを定期的にチェックする必要がありますが、それも必要ありません。遠隔で劣化予兆把握が可能なので、現地検査の必要がないんです。

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