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いつも言うのが遅い...「報連相ができない若手」が量産されてしまう理由

2022年05月04日 公開
2023年02月21日 更新

平賀充記(ツナグ働き方研究所所長)

 

Case2.早く相談に来てくれよ! 報連相が出来ない若手

【オトナのイラモヤ】
納期ギリギリになっても進捗報告がない。大丈夫かぁ?と声をかけてみたら、まったく進んでいない。あまり細かく管理するのもどうか、と見守る姿勢で待っているんだから、何か相談があったら聞きにくればいいのに。これじゃまったく納期に間に合わないじゃないか。取引先になんと言えばいいんだ......。

【若手社員のホンネ】
相談も何も、いつも忙しそうにして、ほとんど席にいないじゃないですか。珍しく席にいたらいたで、眉間にシワ寄せて、難しそうな顔してパソコンと向き合ってるし。この前だって、勇気を出して相談に行ったら、あからさまに嫌そうな表情で話しかけてほしくないオーラ全開だったし。そりゃ相談する気も失せますって。

「今どきの若手って、報連相してこないよね」

この言葉も、オトナ世代から、ほんとによく聞かれる声です。しかし、その報連相も細かく分けてみると、実は色合いが違います。

報告:仕事の進捗具合や結果について上司や先輩等に伝えること
連絡:仕事の情報や今後の予定を関係者や上司などに発信すること
相談:問題が生じたときに上司や先輩、時に同僚などからアドバイスをもらうこと

一緒くたにしがちですが、「報告」や「連絡」は比較的軽めのコミュニケーションです。

一方で「相談」は、何かを解決しなければならないときに発生します。ほぼネガティブなシチュエーションだから、必然的に「重め」のコミュニケーションになります。

オトナからすると、「重め」だからこそ、早く相談にきてほしい。若手社員からすると、「重め」だからこそ、尻込みしてしまう。このギャップが、オトナのイラモヤを増幅させるわけです。実のところ、報連相に関するイラモヤの大半は、この「相談」に関するものなんですよね。

「こんな状態になる前に早く相談してくれよ......。こう感じることはありますか?」管理職研修などでこう聞くと、100%「はい」という答えが返ってきます。

しかし、その管理職に、「みなさん自身は、自分の上司に早め早めに相談できていますか?」と聞くと、これまた、ほとんどの方が、「自分自身もできていない」と答えます。そして、その質問で、自分の部下や後輩がなぜ相談に来ないのかという理由に、ハッと気づくのです。

それは、まさに「話しかけにくいオーラ」です。

冒頭の若手社員のホンネにもあるようなシチュエーションは、オトナ世代も自分の上司とのやりとりで、身をもって経験しています。自分ではあまり自覚していなくても、自分にとっても話しかけにくい上司がいることに思い当たり、自分も負のオーラを出していたことに気づく。こんなオトナ世代、かなりいます。

「話しかけるな!」という空気感が積み重なると、いずれ部下の気持ちは離れていきます。そして部下が相談に来るのがより遅くなり、結果的に自分の首を絞めることになってしまいます。多かれ少なかれ、こうした悪循環は、オトナも分かっているはず。

とはいえ、なかなか改善されません。それは、やはり忙しいからです。だから、仕事が多いオトナほど、この残念なオーラが出てしまいます。

 

<解決のヒント>負のオーラを消す

若手社員から相談に来てほしいなら、やはり負のオーラを消すしかありません。ここでは、即効性のある「話しかけにくいオーラ」の消し方をご紹介しましょう。

それは、「相談OKタイム」と「集中タイム」の導入です。

今なら相談ウエルカムですよ。ごめん、今は業務に集中したいので話しかけないで。こうした状況が周囲と共有できれば、この問題はだいぶ解決されます。

ある企業では、上司が今どっちの状況か、マークを作って、デスクに掲示するようにしました。相談OKな時間帯であれば、当然「話しかけにくいオーラ」は出にくいし、部下も安心して相談に行けますよね。極めてシンプルですが、非常に実効性のある施策だと思います。

 

【プロフィール】
平賀充記(ひらが あつのり :組織コミュニケーション研究家。人材コンサルタント)

同志社大学卒業。1988年、株式会社リクルートに入社。人事部門で新卒採用を担当。NY駐在員などを経て「FromA」「タウンワーク」「とらばーゆ」などの編集長を歴任。2008年からは主要求人媒体統括編集長を務め、日本における求人メディア隆盛の一端を担う。2012年、リクルート分社化で株式会社リクルートジョブズ メディアプロデュース統括部門担当執行役員に就任。2014年に同社を退職、株式会社ツナグ・ソリューションズ(現ツナググループ・ホールディングス)取締役に就任。2015年には、ダイバーシティワーカーに関するシンクタンク「ツナグ働き方研究所」を設立、所長に就任。

専門分野は人材採用、人材開発、組織開発など。人材領域を幅広く網羅した知見を持つ。「東洋経済オンライン」「読売新聞オンライン」など寄稿多数。著書に『非正規って言うな!』(クロスメディア・パブリッシング)、『神採用メソッド』(かんき出版)、『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』(アスコム)などがある。

 

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