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定年後の孤独はなぜ危うい? 50代の「肩書に頼らない人間関係」構築法

2022年07月05日 公開

河合薫(健康社会学者/気象予報士)

 

50歳を過ぎてからは「肩書きなし」の準備期間

また、これも当然のことながら、肩書きは退職後には消え去ります。元部長だろうと何だろうと同様です。せいぜい、自己紹介の際に会話の糸口になる程度でしょう。

にもかかわらず、いつもの習慣で、仕事とは関係ない場でも名刺を出してしまう人、「どちらにお勤めですか」と聞いてしまう人が多くいます。

確かに相手の属性を一瞬で知ることができる質問ですし、話題作りの定番なのもわかります。しかし、50歳を過ぎたら、もうそろそろ役職定年や退職後を見据え、それ以外の話題で楽しむ練習もしておきましょう。

肩書きに限らず、何十年と働き続け、社内で一定の立場を得ると、いつしかその環境に染まってしまうもの。「待ち」の習慣が染みついてしまい、自分でも動かねばならない「アウェイ」の場が苦手になっていくのです。

例を挙げれば、自分から挨拶をしない、部下の気遣いにお礼を言わない、などがそうですね。会社での常識が、世間でも常識というわけではないのです。

厳しいことを言えば、挨拶やお礼などは、幼稚園児でもできること。しかし、上下関係や「慣れ」といったことは、そうした基本さえおぼつかなくさせてしまいます。会社である種「塩漬け」になるのは仕方ないこと。それがわかっているなら、退職前から「塩抜き」を始めることが肝要です。

 

人と上手につながる極意は「オバちゃん」になること

ミドルの方々に私がよくアドバイスするのが「オバちゃんになれ」ということです。オバちゃんには、肩書きでものを語らず、どんなに相手が偉くても「何言ってんのよ! あははっ」と笑い飛ばすようなイメージがありませんか? 

若い人たちの中に自ら入って行き、「あら、あなた凄いわねえ!」と手放しで褒める。そんな「オバちゃん」的な人が理想なのです。

実際、肩書きを取り払ったフラットな状態で上手に人とつながれる人は、多くが「オバちゃん」気質だと感じます。図々しくて、お節介で、けれど威張ったりするわけではない。そんな姿勢に、人とつながるヒントがあるのです。

また、ともすれば煙たがられがちなベテラン社員も、1000人近いミドル会社員にインタビューをしてきた私に言わせれば、その多くは「いい人」です。

年下や女性の上司に対しても、しっかり貢献したいと思っているはず。ただ、どうしても自分を大きく見せたい気持ちがあり、それが無意識に出てしまうのでしょう。読者にも、そうした方がいるかもしれません。

そんな悩めるベテラン社員には、「自分の息子や娘だと思って接してみては」と助言することにしています。親はみな、子どもの将来に資する情報を与えたいもの。そうした比較的フラットな関係性を意識すれば、社内でも「役職と無関係な交友関係」を築いていけるかもしれません。

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