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“従業員の居眠り”が難局を打開? 松下幸之助の「困難との向き合い方」

2022年09月23日 公開
2023年01月18日 更新

渡邊祐介(PHP理念経営研究センター代表)

 

幸之助が会得した究極の生きるコツ

日本語学者の森田良行氏によれば、日本語には、「成功」を表す語彙は少なく、「困った状況」を表す語彙は多いのだという。それほどに、「困ったとき」は頻繁に訪れ、そこから抜け出して成功に至るのは難しいということだろう。

また、「苦しいときの神頼み」という言葉が表すように、古来、日本人は困難に出遭うと「極めて他力本願な思想になる」という。

それはある種、「人生とは世の中の掟に従うだけのこと」という悟りのような理解のもと、「困ったときは困ったこととして堪えしのぶか、神仏にすがるしかない。だから、『明日は明日の風が吹く』と考えて現在のささやかな幸せに充足するか、それとも『人事を尽くして天命を待つ』とか、『溺れる者は藁をもつかむ』心境で、現実に立ち向かう」(参考:森田良行『日本語をみがく小辞典』角川ソフィア文庫)ということになるのだと。

ただ、幸之助の場合は、少しだけ常人と違うのではないだろうか。幼少のときから「困ったとき」だらけだった彼には、どんな状況にあっても一条の光を見出すような視点・視座があった。

自然の理に逆らわないとは、他力本願に状況に流されるということではなく、様々な経験の中から、自力と他力をうまく使い分けること。いわば幸之助は究極の生きるコツを会得したとも見えるのだが、いかがだろう。

 

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