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西川貴教が“苦悩の20代”を経て気づいた「自分を変える」ための必須条件

2023年09月10日 公開

西川貴教(ミュージシャン)

西川貴教

ソロプロジェクト「T.M.Revolution」としてブレイクし、2018年からは本名名義で音楽活動を本格的に開始して音楽界を牽引する西川貴教さん。「声量おばけ」の異名をもつ歌唱、MCでの軽快なトーク、奇抜な衣装など、ライブパフォーマンスは圧巻だ。

そんな西川さんが主演(柿澤勇人氏とのダブルキャスト)を務めるミュージカル『スクールオブロック』(日本版演出・上演台本:鴻上尚史)が、新型コロナの感染拡大によって2020年に全公演中止を余儀なくされて以来、3年ぶりに帰ってきた。

本作は、西川さん演じる熱血バンドマンのデューイ・フィンが名門進学校で臨時教師になりすまし、生徒とバンドを組んで共に成長していく物語。この夏最高に熱いミュージカルを届ける西川さんに、本作で主演を務める意気込みから、自分や他人を「変える」ための秘訣について聞いた。

聞き手:Voice編集部(中西史也)、写真:キムラタカヒロ、メイク:浅沼薫(Deep-End)

 

「西川貴教」として観られるということ

――ミュージカル『スクールオブロック』で主演のオファーがきたときは、どのような思いでしたか。

【西川】まさか自分がやらせていただけるとは思いもよりませんでしたし、びっくりしましたね。じつは本作のミュージカルは、コロナ禍前にニューヨークに行ったとき、ブロードウェイで鑑賞したことがあったんです。

仕事の空き日にたまたまチケットが取れた公演が『スクールオブロック』で、圧倒的なパフォーマンスと演出に感動したことをよく覚えています。物語の起承転結がはっきりしていて、とにかくデューイのやることが多い。

こんな大変な役を日本人なら誰が演じるのだろうと思っていたら、自分が務めることになるとは。「ぜひやらせてください」とお答えしました。

――ブロードウェイでミュージカルをご覧になっていた『スクールオブロック』で実際に演じる側になってみて、感触はいかがでしたか。

【西川】本作は1980年代から90年代初めごろの設定なので、30年ほど前の空気感は出したいと意識しましたね。あと、アメリカンジョークが随所に散りばめられています。アメリカらしい文化を日本で上演するにあたってどうすれば面白くできるのか、観てくださる方が違和感を抱かずに楽しめるように試行錯誤しました。

――ミュージシャンとして普段からファンを魅了している西川さんにとって、歌で観客を楽しませる今回のミュージカルはうってつけの役ではないでしょうか。

【西川】いえいえ(笑)。僕は他の演者と違って、舞台人ではなくミュージシャンとしてキャリアを歩んできました。だからその経験を活かして、変に役をつくらずにこなせる強みはあります。

一方で、ともすると役としてのデューイではなく、「西川貴教」として観られてしまう側面もあると思うんです。だから今回は、あくまでデューイとして演じることに徹して臨みました。

 

人が変わるには身に沁みた「気づき」が必要

――本作は熱血バンドマンのデューイによって、優等生の子どもたちやその周りの大人たちも「変わっていく」物語です。他人を変えるため、もしくは自分自身を変化させるために、西川さんが普段から心がけていることはありますか。

【西川】周りのサポートも大切だと思いますが、結局は本人のなかで何かしらの「気づき」が得られるかどうかが重要なのではないでしょうか。

僕は音楽や舞台、バラエティなどいろいろな活動をさせていただいていますが、たとえば舞台だって急に器用にできるようになったわけではないし、むしろ人よりも遠回りしてきました。20代のときは周りにがむしゃらに食らいついていて、葛藤や悩みの連続でした。

周りの方への感謝やありがたみを身に沁みて感じるようになったのは、恥ずかしながら30代、下手したら40代になってからです。そうした「気づき」はただ情報として得たものではなくて、自分の体に感覚として沁み込まないと生まれないはずです。

本作も、デューイや子どもたち、またその周りにいる人たちを通して、観てくださる方が何か「気づき」を得られる作品になれば嬉しいです。

――本作を通じて、西川さん自身もさらに進化していくのでしょう。

【西川】そうですね。稽古のときから日々勉強させていただいていますよ。子どもたちは「コードチーム」と「ビートチーム」、各12人ずつの2チームに分かれていて、すでに芝居の経験がある子もいれば、音楽は得意だけれども演技をするのは初めてという子もいます。彼ら彼女らの成長や変化を間近に感じられて、まさにデューイの役みたいに学校の先生のような気持ちですね。

それに、台本・演出を手掛ける鴻上さんの子どもたちのコントロールが上手くて(笑)。子どもたちへの接し方もそうですし、演技の技術面においても、鴻上さんから多くを学ばせていただいています。

――西川さん自身は、子どもたちとどのように接しているのですか。

【西川】子どもというよりは、一共演者としてフラットに関わっていますよ。感染症対策で稽古中はみんなマスクをしているので、顔と名前、役名を一致させて表情を読み取るのが大変ではありました。コロナ禍での舞台の難しさをひしひしと感じているところです。

作中での子どもたちは小学校同学年の設定ですが、演者は小学生もいれば中学生もいて、年齢に幅があります。普段は物静かでほとんど喋らないけれど、ベースをもたせるともの凄くウキウキする子もいます。

そんな彼女も、稽古が進むにつれて変わっていくんですよ。流れで会話するちょっとしたアドリブのシーンで、初めは彼女に話しかけてもキョトンとした顔をしていたのに、翌日には自分で会話を考えてきて堂々としている。

経験をスポンジみたいに吸収して次に活かす彼女の姿を見て、やはり子どもの成長は凄いなと思いましたね。大人になると、恥をかいたり失敗したりするのが嫌だから、どうしても挑戦から遠ざかってしまいますから。

でも子どもであれ大人であれ、たとえ失敗しても自分の感情が揺さぶられる体験がなければ、大きな「気づき」は得られないはずです。

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