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倉山満 日本は大国に戻る

2017年11月10日 公開

倉山満(憲政史家)

文明国の価値観が通じない国々

 日本は大国に戻るというと必ず「戦前の大日本帝国に戻る気か」との揶揄が飛んでこよう。

 これには、はっきり答える。「そのとおりだ」と。ただし、「飯炊き国家」から、大日本帝国に一足飛びに簡単に戻れるはずがないが、その使命感だけは日本が国家意思としてもつべきだといっておく。

 なぜか。わが国が大国に戻ることこそ、文明的だからである。

 噓だと思うなら、わが国の周辺諸国、敗戦後の日本が媚び諂ってきた国々を見よ。すべて文明国の価値観が通じない国々だ。

 国際法を理解しているのか怪しい、アメリカ。
 国際法を理解した上で破る、ロシア。
 そもそも法を理解できない、中国。
 そもそも人の道を理解できない、北朝鮮。

 アメリカは、まだいい。「人は殺してはならない」という価値観が共有できるので。もちろん、わが国との大戦でフランクリン・ルーズベルトが数多の国際法違反を繰り広げたことは忘れてはならない。アメリカの勝因は2つ。無差別通商破壊と無差別都市空襲である。

 無差別通商破壊とは、わが国の輸送船への攻撃である。米軍は戦闘員と非戦闘員の区別など付けず、民間船こそ狙い撃ちした。あまつさえ、病院船までも情け容赦なく攻撃して恥じることがなかった。

 無差別都市空襲とは、軍事目標以外にも空爆を加えることである。大戦終盤、日本中の都市に空襲がなされた。焼夷弾による意図的な民間人殺傷などは明確な国際法違反であるが、米軍はためらわなかった。そして、2発の原爆である。原爆は非人道兵器であり、その使用自体が国際法違反である。当時のアメリカの原爆投下に、違法性を阻却できるような事由は存在しない。民間人への意図的殺傷に加え、非人道兵器の使用の、二重の国際法違反である。

 その後もアメリカは、ベトナム戦争での枯葉剤使用や、アフガン・イラク戦争での拷問の数々。この国は、戦場において何をしでかすかわからない人たちだと、認識して付き合うべきだ。

 しかし、それでもアメリカは原則として「人は殺してはならない。ましてや残酷な殺し方はしてはならない」との合意ができる国だ。

 だが、ウラジミール・プーチン、習近平、金正恩の顔を思い浮かべよ。「人は殺してはならない」と訴えても、「なぜ?」と真顔で返してくる人たちではないか。

 ロシアは伝統的に、国際法を理解して破る国である。かつてのスターリンを思い出せばよい。「疑わしきは自国に有利に」「本当に悪いことをしたらなおさら自己正当化せよ」という国際社会を生き抜く大原則に忠実だったではないか。

 第2次大戦では、日本の降伏の6日前に日ソ中立条約を一方的に破棄して侵攻してくれた。結果、男はシベリアに送られて奴隷労働、女は中絶や自殺が相次ぎ、日本人は阿鼻叫喚の地獄絵図に叩き落とされた。ところがロシア人は、「日本軍が国境で軍事演習を行なっていた。その時点で日ソ中立条約は無効とされていた」と嘯いた。その演習、4年前の話なのだが。

 現代のプーチンとて、本質的にスターリンと何が変わろう。旧ソ連の版図への拡張主義を繰り返している。記憶に新しいのは、クリミア併合だ。ウクライナは、ソ連崩壊に伴う独立に際し、核放棄の代償にクリミアを得た。ところが、核保有国のロシアの侵攻に、まったくの無力だった。不条理極まりない。

 プーチンの政敵が不審死を遂げているのは、誰もが知る話だ。とくにプーチンの前任者のボリス・エリツィン大統領を支えた、アレクサンドル・レベジにこそ触れるべきだろう。

 レベジは、エリツィンの盟友として、外政においては米欧日との接近を試みた。中国と距離を置くということだ。内政においては、民主化の旗手であった。つまり、「人を殺してはならない」という価値観を有する国との提携を志し、ロシア自身もそのような国になろうとしたのだ。そのレベジは、プーチン政権下で謎のヘリコプター事故死を遂げている。その真相についてはここでは問わない。ただ、日本人になぜかプーチンを「反中親日」と持ち上げる向きがあるが、そのような人士に「レベジについてどう思うか」と聞いて、まともな答えが返ってきたためしがない。重要なのは、現時点の情報での絶対評価ではなく、歴史を踏まえた相対評価であるとの好例だろう。

 プーチンが親日でも何でもないのは、昨年の来日で明らかだ。北方領土交渉を持ち掛けた安倍首相は手もなくひねられ、ゼロ回答どころか、過去の交渉での言質もすべて否定された。

 プーチンの行動原理は簡単で、「弱い者とは交渉しない」「強い者とは戦わない」「とくに二正面作戦は行なわない」である。ヨーロッパでEUと対峙しているいま、アジアでは中国に強く出ることはない。

(本記事は『Voice』2017年12月号、倉山満氏の「日本は大国に戻る」を一部、抜粋したものです。全文は現在発売中の12月号をご覧ください)

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著者紹介

倉山 満(くらやま・みつる)

憲政史家

1973年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院文学研究科日本史学専攻博士課程単位取得満期退学。99年より2015年まで国士舘大学日本政教研究所非常勤研究員として日本国憲法を教える。近著に『日本一やさしい天皇の講座』(扶桑社新書)、『日本国憲法を改正できない8つの理由』(PHP文庫)など。

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