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著者に聞く 『平成デモクラシー史』



2018年04月09日 公開

清水真人(日本経済新聞編集委員)

聞き手:編集部(中西史也) 写真:吉田和本

 ――本書『平成デモクラシー史』では安倍首相の「小刻み解散」に警鐘を鳴らしていますが、どんな問題がありますか。

 清水 野党の課題と表裏一体ですが、有権者にとって政権交代の可能性がない状況での衆院選が続いていることです。「政権選択選挙」を勝ちきった首相が、その民主的正統性を背景に強いリーダーシップを発揮するのが時代の要請ともいえるし、「平成デモクラシー」の本質です。衆院選で勝つことこそ、権力の源泉ではあります。

 しかし、どうも「過剰適応」になりかけている感が否めません。小選挙区制導入後で見ると、安倍首相による解散の間隔は明らかに前より短くなっています。国会の行き詰まりや政策の争点が乏しいのに、野党の態勢が整わない時期にやれば有利だから、という論理しかない。自民党のある若手議員は、「安倍さんは白鵬だ」と評します。強くても横綱相撲じゃないから尊敬できない、と。

 ――野党のほうも政権を追い詰めようとしたら解散を打たれて、自ら墓穴を掘っているようにもみえます。

 清水 内閣人事局、国家安全保障会議の設置などで首相主導体制が制度的にも確立したいま、解散権の在り方を腰を据えて議論すべきです。3年に一度の参院選と衆院選を必ず同日に実施することを慣例にする方法もあります。衆参ねじれのリスクは極小化されます。与野党は同日選をめざしてリーダーを育て、政策を磨いて競争する。選ばれた首相は政権運営に強力なリーダーシップを発揮するが、それは独裁ではなく期間限定で、次の政権選択の審判を受ける。

 このように、安倍首相が好きか嫌いかを超えて、統治構造をトータルに俯瞰してどうデザインし、バランスを整えていくかの議論が、最近の憲法改正論議を見ても不足しているのではないでしょうか。

 ――森友学園問題で明るみに出た財務省の決裁文書書き換えには、首相官邸が各省の幹部官僚人事を一元的に差配する内閣人事局の制度が影響したとの指摘もあります。

 清水 書き換えの真相は別としても「政と官」の仕切り線を、政治の側が押し込みすぎたのではないでしょうか。幹部人事の内閣一元化は、縦割りの省益を超え、オールジャパンの意識で国益に貢献する官僚を評価するのが狙いです。時の首相や官房長官が人事に介入することとイコールではない。

 イギリスを見ても、日本では官邸の内閣官房副長官に当たる官僚機構のトップ、数人の主な事務次官、人事委員会委員長に有識者を加えた合議体で公募などを含めて幹部人事を差配します。官僚組織の専門性と中立性を重んじ、政治家の介入の余地は限定しているのです。内閣人事局は事務次官、局長、部長級まで約600人を一元管理していますが、官邸から目が届く範囲に対象をもっと絞り込むべきだとも考えています。

(本記事は、4月10日発売の『Voice』2018年5月号「著者に聞く」清水真人氏の『平成デモクラシー史』を一部、抜粋したものです)



著者紹介

清水真人(しみず・まさと)

日本経済新聞編集委員

1964年、京都府生まれ。東京大学法学部卒業後、日本経済新聞社に入社。政治部(首相官邸、自民党、公明党、外務省などを担当)、経済部(旧大蔵省などを担当)、ジュネーブ支局長を経て、2004年より現職。著書に、『官邸主導 小泉純一郎の革命』(日本経済新聞出版社)、『消費税 政と官との「十年戦争」』(新潮文庫)、『財務省と政治 「最強官庁」の虚像と実像』(中公新書)など多数。

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