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片岡愛之助が語る、三谷作品『酒と涙とジキルとハイド』にかけた思い

2018年04月27日 公開
2019年05月07日 更新

片岡愛之助(歌舞伎俳優)

大変なときこそ舞台に立つ

 ――本作は東京に先駆けて、台湾で公演されました(2018年3月30日~4月1日)。愛之助さんは意外にも、今回が初の海外公演ですね。

 愛之助 1つの夢だった海外公演を、僕にとって大事な本作で実現できるとは思っていなかったので、吉報を聞いたときは飛び上がるほど嬉しかったです。誰しも初経験は一度きりの貴重なもので、これまでも自分が役者として初めての何かに接したときが、ターニングポイントになっている気がします。

 ――折しも2月6日深夜(日本時間7日未明)に台湾東部地震が発生し、愛之助さんはご自身のブログで現地の被害を心配する投稿をされていました。

 愛之助 地震の被害に遭われた台湾の方々が、1日も早く元の生活を取り戻せることを願うばかりです。本当に大変でつらい状況だと思いますが、塞ぎ込みたくなる状況だからこそ、舞台を自粛するのではなく、精一杯のお芝居を届けることが僕たちのできることだと考えています。東日本大震災のときも僕は同じ思いを抱きながら、舞台に立たせていただきました。とにかく台湾の方々に心の底から楽しんでいただけるよう、演じました。

 ――愛之助さんは今年3月の歌舞伎座で、台湾の開祖といわれる鄭成功を題材とした『国性爺合戦』で主人公の和藤内を演じました。

 愛之助 初の海外公演で台湾に親近感を抱いていた矢先、『国性爺合戦』上演決定の知らせを受け、さらなるご縁を感じました。『国性爺合戦』は、上方歌舞伎の傑作を数多く生み出した近松門左衛門が書いた物語です。

 僕も上方の役者ですが、『国性爺合戦』は普段あまり上演されないこともあり、じつは1回しか観たことがありませんでした。恥ずかしながら、本作の作者が近松門左衛門であることも以前は知らなかった。近松は江戸時代の庶民の日常や風俗を扱う「世話物」で有名ですが、『国性爺合戦』は、台湾を拠点とする明朝の復興運動と いうスケールの大きな物語。本作を通じて、鄭成功という人物はもちろん、台湾について思いを馳せる貴重な機会でした。

(本記事は、『Voice』2018年5月号、片岡愛之助氏の「歌舞伎に宿る『忠義のこころ』」を一部抜粋、編集したものです)

聞き手:編集部(中西史也) 
文中写真:永井浩
ヘアメイク:青木満寿子・山崎潤子 
スタイリスト:手塚陽介

※公演情報『酒と涙とジキルとハイド』
作・演出:三谷幸喜
出演:片岡愛之助、優香、藤井隆、迫田孝也
東京芸術劇場プレイハウス 4月27日~5月26日
問い合わせ:ホリプロチケットセンター 03-3490-4949
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